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クラブオーナーと馬術選手の二刀流!目指すは"理想の馬づくり" by 梁川正重さん


「withuma.」vol.71 梁川正重さん


Profile

お名前:梁川正重さん

年齢:41歳

居住地:北海道勇払郡安平町

Instagram:equine_farm

ホームページ:HAYAKITA Equine Farm

 

第71回は、乗馬クラブ 早来エクワインファームの代表を務め、自身も馬術選手として活躍されている梁川正重さんです!

いったいどのような「withuma.」を送っていらっしゃるのでしょうか?

 


梁川正重さんの「withuma.」

写真:本人提供


乗馬クラブ 早来エクワインファームの経営をしながら、馬術の選手としても活動しています。

クラブでは、お客様へのレッスンを行うほか、乗用馬を育成したり、引退競走馬のリトレーニングをして、馬を売ったりもしています。


私が馬と初めてふれあったのは小学1年生の時でした。

元々犬が好きだったのですが、親が喘息を持っている関係で、家で犬を飼うことが出来なかったので、代わりに触れ合える動物として、両親に乗馬クラブに連れて行ってもらいました。


その後、少し間が空きますが、高校生の時に初めて馬術の試合に出場しました。

そこでは同世代の選手も沢山活躍していて、周りは成績を残せているのに、自分は上手く乗れておらず、「自分も良い成績を出したい!」と思い、そこから本格的に障害馬術の練習を始めました。

そして高校3年生の時、国体の北海道ブロック大会で初めて120cmの障害をクリアすることができ、富山国体に駒を進め、そこで入賞をすることが出来ました。

それまでは失権ばかりでしたが、それがきっかけになったのか、ちゃんとゴールできるようになりました。


その後、酪農学園大学に進学し、大学の馬術部に入りました。

ただ、なかなか厳しい世界で結果が出せない日々が続き、自分の技術も足りておらず、ある時までは大学で馬術を辞めようと思っていました。

しかし、4年生の時に偶々出会ったリーラーズという馬と埼玉国体に出場し、入賞することが出来ました。

その出会いがきっかけで、「もう少しやれるんじゃないか」と思い、馬術を続けることに決めました。


写真:本人提供


大学卒業後は、高校の頃に行っていた乗馬クラブのスタッフさんの縁で、徳島県の徳島乗馬倶楽部に就職。

そこは試合に出たいというお客さんも沢山いらっしゃる環境の良いクラブで、インストラクターとして働きながら、選手としても大会に出場していました。

当時は担当馬14頭を抱え、朝から夜まで、休みの日も含めてひたすら馬に乗り続け、とても良い経験を積むことが出来ました。

ただ、社員として働く中で、会社の方針や経営的な側面から、自分が思う馬の管理が十分にできたかと言えば、決してそうではありません。

そこで、30歳の時に独立を決め、自分が思い描く理想の馬づくりを実現することに。


写真:本人提供


お金や土地の面で課題があったものの、安平町で「ムービングホースファーム」という養老牧場を営んでいる大学の同期がいて、乗馬クラブができる土地などを教えてくれ、無事に開業することが出来ました。

初めは2頭からスタートしましたが、有難いことに開業から2年半で15頭までに増え、元いた場所では手狭だったので、新たに土地を買い、今の早来エクワインファームがある場所に引っ越し、今年で10年目になります。


写真:本人提供


活動において大切にしていることは「馬の体調管理」です。

馬術の大会は全国各地で開催されており、例えば先日の「かごしま国体」は、乗馬クラブのある北海道から最も遠い場所で行われています。

輸送は馬にも負担が大きく、体調管理を怠っていては馬が体調を崩し、大会で結果が出る出ない以前の問題になります。

そのためエサの管理も含め、できるだけベストな状態で持っていけるように心がけています。


また、「チャレンジ精神」も大切にしています。

クラブでは新しい厩舎が建ち、芝の馬場も新たに作り、今月にはウォーキングマシンも完成します。

それら練習環境の充実だけでなく、馬に対しても同じで、血統も新しい血が毎年のように出てきますし、それによって運動の組み立て方も異なります。

馬術は馬あってのスポーツなので、馬の体調が良くないと競技でいい成績を残せない。

でも、馬の体調管理するのは自分で、トレーニングをするのも自分なので、まずは馬の事を良く知らないと、どうしていいか分からないです。

ですから、常に勉強することで新しい発見にもなりますし、それが競技の成績にも繋がるので、いつまでも現状維持ではなく、常に新しいことに挑戦する気持ちを忘れないようにしています。


写真:本人提供


今後の目標は、全日本を優勝することです。

私がこれまでに乗ってきた馬たちは、「この馬で成績が残せなかったら仕方ない」と思える馬ばかりです。

なので、結果が出せなかったことは、自分の努力不足であると思っています。

全日本にも、今までに20回以上出ていますが、決勝のジャンプオフまで進み5位で終わったりと、まだ優勝したことがありません。

そのため、優勝を目指して自分の技術を磨きつづけると同時に、クラブで管理している若い馬も全日本で活躍できるようにトレーニングをしています。

そうすることで自分だけではなく、管理している馬にお客様が乗って、良い成績が出せる事にも繋がりますので、そういったことも含めて、高いレベルを目指した馬の管理を行っています。

 

振り返ると、大学時代にリーラーズと出会っていなければ、今の早来エクワインファームが無かったかもしれないと思うと、梁川さんにとっても本当に大きな出会いだったのですね。


乗馬クラブにお勤めされていた頃は14頭の馬を担当されていたとのことで、競馬界だと厩務員さんが1人で2~3頭くらいですから、それと比較すると、かなり大変だったのではないかと想像いたしました。

乗馬も乗り運動をしてあげないといけませんから、気力も体力もかなり必要ですよね。


また、「チャレンジ精神」については、私も大切にしなければと感じさせられました。

現状に満足せず常に挑戦し続ける姿勢は、馬術においてだけでなく、すべての世界に共通する大切な精神であり、私のような若い世代の人間が先駆者から学ぶべき教えであると感じます。

梁川さんが全日本を優勝される日を私も心待ちにしています。

 

梁川正重さんの「Loveuma.」

写真:本人提供


私は、常に今自分が乗っている馬が一番いい馬だと思っています。

一頭の馬を通して色々な事を学び、次の馬でそれを活かして試行錯誤し、またそれを次の馬にも応用して成績を残していくのが馬術です。

これまでの競技人生を通して、大学時代に国体へ出場した馬や、全日本で入賞することが出来たサラブレッドのパートナーもいましたが、彼らと経験した成功も失敗も、沢山の思い出も、すべて今の馬に引き継いで、最もアップデートされているのが今の馬だということです。


馬術は、自分だけの力ではなく、装蹄師さんや獣医師さんなど、その馬に関わってくれる全ての人と力を合わせて試合に挑みます。

ですから、そこまでに協力してくれた馬や人がいて、その結晶として、試合で結果が出るというところが馬術の魅力であり、醍醐味ではないかと感じています。

 

これまでのパートナーと紡いできたストーリーが、今の馬にも受け継がれている。

馬術選手として歩まれてきた梁川さんならではの視点で、馬術の魅力を語っていただきました。


オリンピック種目になっているスポーツの中でも、選手本人の力だけでは結果を残せないのが馬術であり、その難しさが、より私たちを感動させてくれるのだと感じます。

私も、点ではなく線で見て、馬術の面白さをより一層感じたいと思います。

 

引退馬問題について

写真:本人提供


個人的に引退馬支援と呼べる何かをしている訳ではありませんが、早来エクワインファームでは、引退馬協会様の馬を「再就職支援プログラム」の一環で預かっています。

そのため、その馬たちをリトレーニングして、その馬と相性が良いオーナーさんを見つけて紹介するということをしています。

オーナーさんと相性の良い引退馬が出会うきっかけを提供することで、その馬にとっても良いセカンドキャリアを送れると思いますし、そこに貢献できていることを嬉しく思っています。


馬術の世界に身を置く人間としては、日本でも馬術がメジャースポーツになることで、引退馬問題の解決にも繋がるのではないかと考えています。

実際ヨーロッパでは、馬術はメジャースポーツであり、馬術選手が車のCMに出演したり、企業がスポンサーに付いて大会でも何千万という賞金が出たりしています。

同じように、日本でも競技人口が増えてメジャーになれば、広告としての効果もありますから、スポンサーが付いて賞金も上がることでしょう。

そして人口が増えれば馬の需要も増え、引退馬が必要とされることにも繋がると思います。


写真:本人提供


また、日本の馬術大会は身内だけのような試合が多いですが、近年はRRCなどの競技会でJRAから賞金が出ており、それはとてもいい流れだと感じています。

しっかりと賞金が出れば、引退馬を引き取ってリトレーニングをして、大会で結果を残そうとする競技者も増えますし、そういった大会に出て競馬ファンの目に留まる機会が増えることで、「競走馬時代に応援をしていた馬だから、私が面倒を見ます」というオーナーさんが増えるかもしれませんね。

 

RRC(引退競走馬杯)などの競技会は、単に引退馬に乗馬として歩む道を提供するだけでなく、その後のチャンスを与えるきっかけにもなるかもしれないということですね。


同じ馬を扱っているスポーツでも、競馬⇆馬術の世界には少し距離感があると思います。

競馬ファンの中でも、馬術競技も見ているという人間はそう多くないと感じます。

ですが、競走馬時代に活躍していた馬、自分が応援していた馬が馬術大会に出ているとなれば、競技を見る競馬ファンも増えるでしょうし、それをきっかけにサードキャリア以降のチャンスを手にする馬も出てくるかもしれませんよね。

そういった意味でも、引退馬の競技会が存在する意義の大きさを感じることができました。

 

 

今回は、乗馬クラブ 早来エクワインファームの代表を務め、自身も馬術選手として活躍されている梁川正重さん「withuma.」を伺いました!

毎週定期更新してまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!


 

「withuma.」では、馬にまつわる活動や、その思いについて発信していただける方を募集しております。


リモート取材は一切なく、専用フォームからアンケートにお答えいただくと、その内容が記事になります。


今後も「withuma.」を通して、引退馬問題前進の一助となれるよう、微力ながら馬事産業・文化に携わる人を発信していきますので、是非皆さまからのご応募をお待ちしております!


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協力:梁川正重さん 取材・文:片川 晴喜 編集:平林 健一 著作:Creem Pan

 


2 comentários


HisMajesty Graustark
HisMajesty Graustark
23 de out. de 2023

>近年はRRCなどの競技会でJRAから賞金が出ており


環境の良い早来エクワインファームでトレーニングを受けたおかげで、競技会で好成績を残せる馬が増えていますね。引退競走馬にとって非常に有意義で華のあるセカンドキャリアだと思います。


スティッフェリオ号などの走行を見ていて、ステイゴールドの産駒を初めからジャンパーとして育てたらどうなるだろう?と思うことがあります。

怖いもの知らずの前向きな気性、柔らかい筋肉とバネの強さ、小回り対応とスピード感、(馬によっては)周囲のライバルたちをひと睨みで萎縮させるオラオラ感。。。。😌💦

サラブレッドだし、走行タイムが決め手になるジャンプオフなどで強さを発揮するかもしれませんね。


既存の馬術競技だけでなく、もう少しエンタメ性の高いホースショーも増えれば楽しいと思います。スポンサーはもちろんJRA。👈🙂

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HisMajesty Graustark
HisMajesty Graustark
23 de out. de 2023

>日本でも馬術がメジャースポーツになることで、引退馬問題の解決にも繋がるのではないか

>実際ヨーロッパでは、馬術はメジャースポーツであり


おっしゃる通りです。

ただ、馬術競技ファンとして日本とヨーロッパの乗馬事情を比較すると、日本ではスタートラインからして「乗馬/馬術の普及」に注力しているとはとても思えないというのが正直な感想。


小さな子どもの頃から馬のおもちゃで遊んだり、幼稚園児や小学生が先生に引率されてポニー乗馬に通ったりというような、馬という動物に親しむきっかけがとても少ない。

また、乗馬クラブに入会する場合は、特に試合に出たくてトレーニングする人でなくても(ヨーロッパに比べて)費用がかかりすぎるという問題もある。💸💸💸


私は限られた例しか知りませんが、たとえば入会料だけ見てもドイツの数倍〜10倍以上というクラブが圧倒的に多いです。😳

これでは「日本の馬術大会は身内だけのような試合が多い」という状況になるのは当たり前。ごく限られた人しか馬術選手の条件を満たせないような構造になっているのだから。


経済的にもっと敷居を低くして、大勢の子どもが気軽に乗馬を始められる環境をつくる。


☝️日本の馬事界が乗馬人口を本当に増やそうと思うのであれば、こちらの方が先決だと思っています。(敷居が低くなって乗りたい人が増えれば、需要に合わせて乗用馬を供給する都合上、引退馬の就職先も増えます)


馬に乗る子どもが増えれば、その中から才能ある馬術選手が輩出する可能性も今より高まるでしょう。見どころのある人にスポンサーを付けたり奨励金制度を設けたりして、本人に過剰な金銭的負担をかけることなく若いうちから育てていくことで、馬術の国際大会での日本人選手の参加数・成績が向上すると思います。

「馬術選手が車のCMに出演したり」して広告効果をあげられるのは、それだけの成績を残しているからです。現状では馬術選手よりアドマイヤジャパン号の方が広告として成功していますので、競技馬の皆さんも負けずに人間と一体になって精進していただきたいと思います。💪🐴


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