「引退馬の受け皿を作りたい!」自身で山を開拓し養老牧場を営む、元海上自衛官 by 野崎啓明さん
「withuma.」vol.60 野崎啓明さん
Profile
お名前:野崎啓明さん
年齢:39歳
居住地:岡山県
Twitter:@keimeifarm
第60回は、岡山県瀬戸内市で養老牧場・ケイメイ牧場を経営している、野崎啓明さんです!
いったいどのような「withuma.」を送っていらっしゃるのでしょうか?
野崎啓明さんの「withuma.」
写真:本人提供
岡山県瀬戸内市にある、引退馬の養老施設・ケイメイ牧場の牧場主をしています。
養老牧場を始めたキッカケは、2012年に当時働いていた乗馬クラブで、漠然と「引退した馬達の受け皿を作りたい」と思ったからでした。
2021年7月に山を借りて開拓し、翌年12月に第一種動物取扱業者としての許可を得ました。
その後、2023年2月に佐賀県より引退馬が2頭入厩し、現在に至ります。
写真:本人提供
馬と接する中で特に大切にしていることは、
・常に馬ファーストであること。
・怪我をしない、させないこと。
・馬を癒すこと。
サラブレッドは凄く繊細で、日々管理を徹底しなければならないです。
ちょっとのキズから大きな病気になりますし、適切な飼料をあげないと病気にもなってしまいますので、日々観察を続けています。
今後の目標としては、まずは牧場の軌道に乗せて、最大で8頭の馬を入厩させたいと考えています。
以前大手メディアの記事で、元海上自衛官の方が養老牧場を開設されたと拝見して、ケイメイ牧場さんの存在を知りました。
「引退馬の受け皿を作りたい」と思い立っても、なかなか行動に移せる人は多くないと思います。
野崎さんはご自身で借地された山を開拓されたとのことで、とてつもない行動力に感服いたしました。
まだ本格的にスタートされたのは今年に入ってからのようですし、これからも沢山の馬を癒し、沢山の人が癒される養老牧場となるよう、ご発展をお祈りしております。
野崎啓明さんの「Loveuma.」
写真:本人提供
サラブレッドは産まれながら走ること、人を乗せる事が宿命であり、それが出来なければ淘汰させられる運命にあります。
ただ、競馬や乗馬で活躍出来ずとも、馬の持ってる魅力を伝えることで、馬の牧場が全国に出来ると良いなと思っています。
馬は見ているだけで自律神経が良くなる癒しの動物ですが、馬を癒さなければその様な癒しを得れないと考えますので、やはりそこを大切にしていきたいと思います。
お気に入りの馬は、初めて来たトントントントロとグラマーです♪
写真:本人提供
トントロは、たまたまSNSで話を聞いたことで、乗りかかった船でケイメイ牧場へ来ました。
サラブレッドにしては、とても大人しく可愛くて、人間が好きです!
競馬場にいたころから、本当に大切にされていたんだと伝わってきます。
グラマーは、一次預かりの乗馬クラブにおり、オーナー様の心遣いで一緒に入厩。
名前の通り"グラマラスボディー"で、芦毛特有の破天荒な性格です。
お世話は大変ですが、それはそれで可愛いです。
写真:本人提供
私にとって2頭は、「色んな出会いをくれる神の使い」です!
おっしゃる通り人を乗せて走る以外にも、馬の魅力的な部分はたくさんあると思います。
一度触れ合っていただければ、その良さをご理解いただけるとは思うのですが、触れ合うことのできる場所が少なく、なかなかみなさん機会がないのがボトルネックです。
場所が増えないと需要も増えない、需要が増えないと場所も増えないという、「鶏が先か、卵が先か」みたいな話になりますが、今あるふれあい可能な場所をうまく伝えながら、馬好きを増やしていくことが、私たちメディアにできることかと思います。
トントントントロ号は、『Withuma.』vol.58「『この子だけは!』必死の思いで、担当馬引退後の命を繋げた厩務員 by ぷちゃんままさん」の回で登場した、佐賀競馬の厩務員さんに命を救われた"あの"馬ですね!
現在は同じく佐賀競馬で走っていた元競走馬のグラマーと一緒に、ケイメイ牧場さんで余生を送っているのですね。
そんな"神の使い"である2頭、Twitterにそれぞれのアカウントがあります。
日々の様子を見ることができますので、ぜひチェックしてみてください。
トントントントロちゃん(@by67158897)
グラマーちゃん(@by23255500)
引退馬問題について
写真:本人提供
競馬や乗馬で働けなくなった馬でも人を癒すことが出来るように、ブラッシングなどの触れ合い体験を行っています。
また、牧場が軌道に乗れば、新たな馬を入厩させたいと考えています。
写真:本人提供
引退馬問題の解決にあたっては、先ずは馬のことを正しく知ってほしいと思います。
馬は優しくて可愛い部分もありますが、500㎏前後の巨体で、単純比較でヒグマの倍です。
ライオンと馬を飼育するのに、どちらが危険ですかといえば、馬の方が危険です。
動物には間接飼育と直接飼育という飼育方法があり、ライオンは危険なので直接触れる事をせずに飼育しますが、馬は人が直接触って手入れなどをしないといけません。
サラブレッドは、すぐにパニックになったりするので、しっかり躾けをして正しく扱わないと、人も馬も怪我をしたり、最悪亡くなるケースもあります。
なので、可愛いけれど危険なんだということを理解して頂きたいです。
引退馬の現状も、あらゆる角度から見ないといけません。
やはり走れなくなって処分は可哀想と言うのが一般的ですが、馬は30年前後生き、毎月高額な預託料が掛かります。
もちろん最後まで面倒を見るとなれば、とても高額になります。
それを可哀想だからといって、乗馬クラブや馬主さんに「最後まで面倒をみて」というのも経営的に難しい所です。
「馬主さんが全部面倒を見るべき」という意見もありますが、馬主さんは競馬場存続の為に馬を多く走らせないといけませんし、ある程度馬を持って使わないと、競馬自体が成り立ちません。
生産者の方の中には、家族経営で馬を生産している牧場などもありますから、馬主さんは、その生産者の生活の為にも毎年馬を買わないといけません。
当然食肉の需要もあり、馬の業界全体が色んな仕事で廻っているので、それぞれ自分なりの答えを出して目の前の1頭を大切にする事が1番だと思ってます。
正確な答えは無いので、各々自分で考えて支援していただくことで、良い未来が待っていると思います!
おっしゃる通り馬の魅力と危険性は、どちらも正しく伝える必要があると感じました。
SNSでは馬の良い部分が主に注目を浴びますが、危険性を知らないことが一般ファンの牧場見学時の禁止行為などにも繋がっているのではないかと、個人的には仮説立てています。
馬の安全のためには勿論ですが、人が簡単に怪我する、力差がある動物であることを改めて認識し、双方の安全を確立していくことが大切だと考えます。
また、引退馬問題の"責任"の部分にも触れていただきましたが、おっしゃる様に馬の業界は色々な人が関わっており、それぞれの役割の中で廻っているものですよね。
押し付けるのではなく、それぞれに何ができるのかを考えていくことが、良い未来につながると感じました。
今回は、岡山県瀬戸内市で養老牧場・ケイメイ牧場を経営している、野崎啓明さんの「withuma.」を伺いました!
毎週定期更新してまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!
「withuma.」では、馬にまつわる活動や、その思いについて発信していただける方を募集しております。
リモート取材は一切なく、専用フォームからアンケートにお答えいただくと、その内容が記事になります。
今後も「withuma.」を通して、引退馬問題前進の一助となれるよう、微力ながら馬事産業・文化に携わる人を発信していきますので、是非皆さまからのご応募をお待ちしております!
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協力:野崎啓明さん 取材・文:片川 晴喜 編集:平林 健一 著作:Creem Pan
野崎さん、海自におられたのですか?😳
亡父が旧海軍兵学校出身で、生前は江田島を「第二のふるさと」と呼んでいました。
「カッター(短艇)訓練で尻の皮がむけたり分隊監事にガッツリ怒られたりしてキツい思い出しかないのに、無性に懐かしい」と言って。
今は兵学校の跡がそのまま海上自衛隊の幹部候補生学校・術科学校になってるんですね。😌⚓️
「馬を扱える人」を養成する際、すごく適性ありと睨んでいるのが自衛隊経験者。
体力と行動力があり「規律を守る生活」を体験している方々です。野崎さんのようにリーダーシップと作戦立案能力(プランニング力)があればもっといい。
馬の世話には基本となるルーティーン・ワークがあります。それをこなす上で、「これをしてはいけない」「あれをしなければいけない」という最低限の決まり事があり、そのルールに沿って生活のリズムやパターンを作ることになる。
時間配分もだいじで、なるべく効率よく作業をして休むときは休み、気力体力をしっかりとリチャージして不測の事態にも備える。それで一年365日持続可能な働き方ができるようになる。
自衛隊に入ったら普通にやっていることですよね。この経験を活かしていただきたいと思うのです。
今後、JRAが引退競走馬の終のすみかとなる拠点(養老牧場)を全国規模で準備することになるのなら、そこに配置する人員を確保するのは急務です。
自衛隊で任期を終えて次のキャリアを考えるとき、動物好きな方はぜひ「馬のしごと🐴」を選択肢の一つに入れていただきたい。そういう人材をJRAは全力でサポートすべきだと思います。
(あと、個人で養老牧場を運営している人・これから開設したい人のために、用地の固定資産税を農地なみに軽減してほしい。これについては農水省と相談中だそうです)
日本が競馬のパート1国に格上げされたこともあり、JRAが組織として引退競走馬の福祉事業(利活用と余生支援)に取り組むことになったのは周知の事実。
片野ゆかさんのWeb連載『セカンドキャリア ー 引退競走馬をめぐる旅』(最終回)によれば、国内には現在8万頭ほど馬がいて内8割がサラブレッドで、この8万頭に3万~4万頭をプラスして合計12万頭分の社会的ニーズや居場所を見つけるという試算において、(驚くべきことに)事業予算の目処はすでに立っているというのがJRAの回答。しかし、喫緊の課題は土地不足と人手不足だとか。
特に、「馬を扱える人」が極端に減少した現代の日本で、どのように人材を育成・確保していくのかが最大の悩みどころなのだそうです。
ただ、家庭犬ならぬ家庭馬の世話というのは、日本でも昔は女子供が男性に劣らずやっていたこと。
「牧場に預託して共同所有する」という形の中で、自馬に会いに行く際、馬を扱う時の注意点とともに手入れや飼付けの方法、怪我・病気への対処方法などを少しずつ習うことができるはずです。(指導料別途☝️🙂)
現役競走馬を管理するわけではないのですから、コンパニオンホースの日常的なお世話をあまり「特別なこと」ととらえすぎて身構えてしまわずに、まずはケイメイ牧場のような施設に通って馬との基本的な付き合い方を虚心に教えていただくのがベストだと思います。😊❤️🐴
引退馬を伴侶動物(コンパニオン・アニマル)つまり「ペット」の選択肢の一つとして考えることを、日本にも定着させたいと願っています。
ただし、飼い方にひと工夫がいる。
一人が単独で飼うのでなく「共同所有する🧑👨🏻👱♂️👵🏻👴🏻」、自宅で飼うのでなく「牧場/農家などに預託して飼う🧑🌾🐴🌱」というやり方を、日本独特の標準飼養形態として普及させてもいいんじゃないかな?
もちろん、土地・時間・お金が工面できて自分の家で飼えるなら、それに越したことはない。
でも現実にはなかなか難しいので、競馬でも人気がある「一口馬主」の仕組みをもっと積極的に引退馬に応用すればいいと思うのです。
NPO法人引退馬協会のフォスターペアレント制などは有名ですが、一般の動物好きさんの間にはまだまだ知られていない。この方法を使えば、リーズナブルな料金で小動物だけでなく「馬をペットにできるんだよ!」というメッセージを、主要メディアやSNSを駆使してどんどんアピールできれば。