「この子だけは!」必死の思いで、担当馬引退後の命を繋げた厩務員 by ぷちゃんままさん
「withuma.」vol.58 ぷちゃんままさん
Profile
お名前:ぷちゃんままさん
年齢:24歳
居住地:佐賀県
Twitter:@Sakura68Moon
第58回は、佐賀競馬場で厩務員をされている、ぷちゃんままさんです!
いったいどのような「withuma.」を送っていらっしゃるのでしょうか?
ぷちゃんままさんの「withuma.」
写真:本人提供
佐賀競馬場で厩務員をしています。
私にとっては馬=競走馬になるのですが、担当馬を日々お世話するからこそ、仲良くなるために、どうすればいいのか、その子、その子で探りながら関わっています!
それを探るのも楽しいのです♡
馬との関わりにおいては、とにかく馬にナメられないように白黒ハッキリして、お世話しています。
言い方は悪いかもしれませんが、1馬力の500キロの馬を扱うので、お互いに怪我しないためにも大事なことだと思っています。
他にも大切にしていることは沢山ありますが、もう1つ挙げるとすれば、馬の日々の変化に、どれだけ気付けるかですね。
競走馬は、ちょっとした変化も命取りになるので。
私なりに変化に気づけるよう日々観察しています!
厩務員さんにとって担当馬は、いわば家族のような存在だと思います。
その馬ごとの個性に合わせて、より良いコミュニケーションを取っていくことは、日々の安全管理にも繋がる大切なことなのですね。
傍から見ていたら分からない様な小さな変化だったとしても、アスリートである競走馬にとっては、その後の命運に関わる重大な変化となる場合もあると思います。
「あれ、何かいつもと違うな」というサインや違和感に、毎日お世話をしている厩務員さんが気付いてあげることが大切なのですね。
ぷちゃんままさんの「Loveuma.」
写真:本人提供
馬の魅力は語り出すとキリありませんが、とにかく目が可愛い!
大きな瞳、吸い込まれそうな純粋な目が好きです。
目にも、つり目、タレ目、大きな目、小さな目、色んな子がいます♡
競走馬を相手していると、普段は甘えてくる子が、レースでは一生懸命泥だらけになりながら走り、筋肉もバキバキに張って帰ってきて、そういった"頑張った証"を見るとギャップ萌えします(笑)
これは、競走馬をお世話している人ならではの感性だとは思うのですが(笑)
馬が好きになったきっかけは、流鏑馬に一目惚れして、射手師になりたくて流鏑馬をしている乗馬クラブに通ったことでした。
最終的な目標は射手師になることですが、馬の可愛さに圧倒されたこともあり、高校卒業後は佐賀競馬場で厩務員として仕事をしています!
卒業式後に同級生達が記念写真を撮っている中、私は制服で馬に跨るのが夢だったこともあり、乗馬クラブに駆け込み馬装して跨ったのは最高の思い出です(笑)
写真:本人提供
私のお気に入りの馬は、、、そうですね。。。
沢山いるのですが、私の中で引退後の命を繋げることが出来たトントントントロ(競走馬名)こと、ぷーちゃんですかね。 私が2歳馬を担当して、2頭目の牝馬でした。
今までの担当馬は、乗馬クラブに電話したり、引退馬を引き取ってもらえる所などに連絡するも、なかなか繋げることが難しく、最後を見届けることしかできませんでした。
競走馬を世話するということは、そういった現実も受け止めなきゃいけない。
そうとは分かっていても、やり始めたら"とことん"やりたくて、私の場合は許可を得てやっていました。
乗馬クラブや養老牧場に引き取られたり、その他の道が見つかって余生を過ごせたとしても、その子にとって幸せかどうかは、その馬にしか分かりません。
けれども、ぷーちゃんの場合は、「この子だけは!」と必死になっていたところ、とある養老牧場様に声をかけていただき、無事そちらへ向かうことが出来ました。
私が厩務員として、現役最後の担当者として世話をしてきた馬たちの中で、初めて余生を送らせることができた子なので、1頭挙げるすれば、ぷーちゃんかなと思います!
私にとっては、"アイドルホース"です!
私も馬の瞳には惹き込まれます。
大きな目に反射する景色を見ながら、「この馬には世界がどう見えていて、何を思っているんだろう」と考えたりもします。
ぷーちゃんの命を繋いだというお話、とてもリアルで貴重な体験談をありがとうございます。
諦めなければならない事が常だったとしても、ご自身ができる限りの行動を絶えず起こしておられたからこそ、実を結んだ出来事だったのではないかと思いました。
映画『今日もどこかで馬は生まれる』の中で、認定NPO法人 引退馬協会の代表を務める沼田さんが、
「一頭の馬に対して、熱い想いの人が一人はいないと、やっぱり馬は助からないんですよ」
と仰っていました。
ぷーちゃんの事に関しても、ぷちゃんままさんが「この子だけは!」と必死に奔走されたからこそ、養老牧場で余生を過ごすことが出来ているのですね。
引退馬問題について
写真:本人提供
難しい問題ですよね。
「乗馬クラブを増やせばいい」「牧場を増やせばいい」
それだけの問題でも無いような気もします。
なんにせよ、馬をこよなく愛する人に管理してもらえる環境を、馬に与えてあげること。
それが1つではないかなと思います。
口にするのは簡単ですが、恐らく追求すればするほど枝分かれして、沢山の意見や問題が出てくると思います。
敷地、施設、飼養管理など、掛かる費用も決して安くは無いので。
ただ、とにかく馬を愛する人が、馬をお世話して欲しい!!!と切実に思っています。
仰る通り、受け入れる場所をいくら増やしても、その馬に需要が無ければ、経済性の無い馬が生きていくことは難しいと思います。
受け皿の拡充は、場所と人がセットで初めて成立するものですよね。
冒頭でも仰っていただいたように、馬にとって何が幸せなのかは、その馬にしか分かりませんが、馬を愛する人がお世話をしてくれれば、きっと不幸になることは無いと信じています。
お互い言葉が通じない以上、私たち人間が出来ることで馬の幸せとは何かを考え、日々接していくことが大切だと感じました。
今回は、佐賀競馬場で厩務員をされている、ぷちゃんままさんの「withuma.」を伺いました!
毎週定期更新してまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!
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協力:ぷちゃんままさん 取材・文:片川 晴喜 編集:平林 健一 著作:Creem Pan
>つり目、タレ目、大きな目、小さな目、
「つり目」で思い出すのはブエナビスタ。
細面の美人さんで、コリー犬のように特徴的なアーモンド型の目。
夭折したジョワドヴィーヴルもこんな目をしていたので、両馬のお母さんのビワハイジの系統から受け継いだのかもしれません。サラブレッドの中でも、少し先祖返りしたような古典的な顔立ちだと思いました。
「タレ目」の例は思いつかないな。🤔
ものすご~くリラックスしているときは、みんな目がトロンとしてタレぎみ🤤に見えたりします。
24時間365日普通にタレ目の仔がいたら、教えてください。
サラサラの長い髪に制服(?)の騎乗写真、ステキですね。創作意欲をかき立てられるというか。
こういう人馬が出てくるCMや映画や小説を創りたくなります。(JRAのアニメCMも、なんで実写にしなかったかな、と物足りなく思っているのです。実在の牧場の厩務員さんや馬たちに重ねてあのナレーションを聞きたかった)
エミリ・ディキンソン(1830~1886、米国の詩人)の作品の中に「わたしの一生はむなしくはない」というフレーズが繰り返される一篇があります。:
もしだれかの胸が張り裂けるのを止めることができれば
わたしの一生はむなしくはない
もしだれかの人生の苦しみを和らげ
その傷を冷やすことができれば
あるいは気を失った一羽の駒鳥を
そっとその巣にかえしてやることができれば
わたしの一生はむなしくはない
(新倉俊一 訳)
サラブレッドは、その名のとおり専門的な育種(ブリーディング)の対象として作出された動物。品種改良を重ねる過程で、淘汰は宿命です。
その現実を理解した上で、なお救いたい命が目の前にあるときは、ためらわずに行動すべきだと思う。
ぷちゃんままさんが、大変な努力の末にぷーちゃん❤️を無事に養老牧場に託して馬生をつないであげたこと、なぜか自分のことのように嬉しく読みました。
自分の一生がむなしくはないという確信を持って生きたいと願っています。
「全頭救えないんだったら無駄。一頭や二頭助けたって何も変わらない」という態度に出会うたびに、「変えてやる!」と(心の中で)叫んで拳を握りしめる毎日です。✊😊