馬頭観音祭「シャングシャング馬」で馬を身近に! by 松原ステーブルス・松原正文さん
「withuma.」vol.35 松原 正文さん
Profile
お名前:松原 正文さん
ご年齢:61歳
居住地:新潟県
第35回は、養老牧場・松原ステーブルスの代表を務める、松原正文さんです!
いったいどのような「withuma.」を送っていらっしゃるのでしょうか?
松原 正文さんの「withuma.」
幼いころから馬に接する機会が多かったこともあり、中学校を卒業後、16歳で新潟競馬の騎手になりました。
およそ15年ほど騎手を務めた後、同じく新潟競馬で1995年に調教師として開業、2002年の新潟競馬閉場後は金沢競馬場に拠点を移し、2007年まで調教師として活動をしていました。
松原ステーブルスは2005年に設立された、新潟県胎内市にある養老牧場です。
競馬界に従事していた頃、成績をあげない馬の最後を目の当たりにした経験から、馬の為にできることはないかと考えたことが、この牧場を始めたきっかけでした。
競馬を引退した馬の中には、乗馬用に再調教されて、生き残ることができる馬もいます。
しかし、これらは本当にほんの一部に過ぎず、多くの馬には「廃馬」という道しか残されていません。
乗馬用の馬たちにとっても、繁殖用の馬たちにとっても、年老いてしまえば、同じく「廃馬」という道が待っています。
そのような現役馬としての役目を終えた、競走馬、繁殖馬、乗馬用、遊園地にいた馬など、様々な経歴を持つ馬たち。 サラブレッドや木曽馬、寒立馬、ミニチュアホースの他、猫や犬も、みんな仲良くのんびり暮らしているのが松原ステーブルスです。
今後の目標は、耕作放棄の畑や田んぼ、空き家を活用し、馬と人とが暮らせる地域を作ることです。
競馬界に精通されていた松原さんだからこそ目にした、引退馬が突き当たる厳しい現実があったのだと想像します。
時代も進み、当時と比べると引退馬への意識も変わってきたかとは思いますが、まだまだ課題は山積しているのが現状だと感じます。
松原ステーブルスさんには、競馬を引退した馬以外にも、さまざまな背景を持つ“引退馬”が余生を送っているのですね。 「馬と人が暮らせる地域づくり」、とても素敵な展望だと感じました。 モデルケースとして成立し、それを参考にする地域が増えれば、日本の各所で馬と人が共存する景色が見れる日が訪れるでしょうし、そうなってほしいなと思いました。
松原ステーブルスさんのホームページはこちらから
※読者の皆様に補足させていただくと、冒頭に出てくる「新潟競馬」とは、今のJRA新潟競馬のことではなく、新潟県競馬組合が運営していた地方競馬のことを指しています。
JRAが管理する新潟競馬場を借用して開催するほか、三条競馬場も運営・開催していましたが、売り上げの低迷から2002年に同競馬組合が解散しました。
松原 正文さんの「Loveuma」
馬に関わり始めたきっかけは、家の土間に馬がいたからですね。
お気に入りの馬は1頭に決められません。
関わった馬は全て、「家族」ですから。
そして、馬の気持ちを考え、人間の思い通りに馬を振り回さないことが大切だと考えています。 また、松原ステーブルスに来たからには、「全頭が幸せに暮らしてほしい」という想いで馬たちを養っています。
松原ステーブルスがある場所は、直線距離で海岸まで2.5㎞と、海に近い場所に位置しています。
年間を通じてほとんどの時期で湿度が高く、夏は他所よりも汗をかき、冬は日本海の湿気を多く含んだ雪で体毛が濡れることになります。
ですから、馬も人と同じように、髪が濡れて、風邪をひいてしまう事があります。
牧場の場所は移すことが出来ませんから、教科書通りの飼育方法では対応できないことも多々あり、試行錯誤の上、この場所、土地柄、新潟特有の気候に対応した飼育方法を編み出してきました。
家の土間に馬がいた...
今の日本ではなかなか見ない光景ですが、 松原さんは農耕に馬を用いていた時代を生きていらっしゃったのですね。
地域にもよると思いますが、2000年を過ぎても農耕馬を飼っている村はあったと聞いたことがあります。
松原ステーブルスさんの位置する新潟沿岸部特有の気候について触れていただきました。
そして、新潟といえば米どころ。
多くの牧場や乗馬クラブでは、馬房の敷料として、藁やおが屑を使うところが多いかと思いますが、松原ステーブルスさんでは米ぬかを使用されているとホームページで拝見しました。
さすが新潟ですね!
近隣の米農家さんが余してしまう、いわゆる産業廃棄物などを有効活用できるのは、地域に根付く上でとても大切だと考えさせられました。
引退馬問題について
私たちが行っている引退馬支援は、馬と人との交流を通じて、馬の素晴らしさを広めることです。 牧場見学や体験乗馬を通じて、現場でしか味わえない馬の魅力を、五感をフルに使って体感していただくことで、ふれあうことでしか分からない"馬の素晴らしさ"を感じていただけます。
また、地域の文化を通じた交流も行っています。
同じ胎内市に位置する赤谷地区には、「シャングシャング馬」という馬頭観音祭が古くから伝わっています。
このお祭りは、毎年4月18日に行われ、春の農作業の始まりを告げる地域の大切な伝統です。
特別な装飾を施された馬に乗り、急こう配の参道を一気に駆け上がります。
コロナ渦で2020,2021年は中止となりましたが、2018年の開催時には、県内外から約900人が集まりました。
馬と人が一体となる姿を観てもらうことで、馬を身近に感じてもらえると考えています。
馬は見ているだけでも癒される、力を貰える動物だと思いますが、ふれあうことでもっと深く魅力を知ることができると、私も実体験を通して感じている所です。
「シャングシャング馬」というお祭りがあることは、今回初めて知りました。
舞台となるのは、江戸時代に建立されたという、胎内市にある鳥坂神社。
五穀豊穣と農耕家畜の安全を願い、この地域に古くから伝わる歴史あるお祭りだそうですが、馬を農耕に用いることが無くなった50年ほど前に、一旦なくなってしまったそうです。
しかし、2015年にお祭りは再び復活。
その背景には、地域の活性化や、お祭りを通して馬を身近に感じてもらうことで、一頭でも多くの馬を救いたいとの思いで立ち上がった、地元有志の方々がいました。
その中の一人が、松原さんだったそうです。
ちなみに…祭りの名前にもなっている「シャングシャング」は、馬が付ける鈴の音色に由来するそうです。
「シャングシャング馬」の様子はこちらから
五穀豊穣にちなんだお祭りといえば、他にも長野県では、「田立の花馬祭り」がありますよね。
長野らしく在来馬の木曽馬を用いるお祭りで、まるで孔雀のような大きく華やかな装飾が印象的です。
地域の活性化や、馬との共存という意味で、馬のお祭りがもっと広まってほしいですし、Loveuma.もその一助になれればと思っています。
今回は、養老牧場・松原ステーブルスの代表、松原正文さんの「withuma.」を伺いました!
毎週定期更新してまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!
「withuma.」では、馬にまつわる活動や、その思いについて発信していただける方を募集しております。
リモート取材は一切なく、専用フォームからアンケートにお答えいただくと、その内容が記事になります。
今後も「withuma.」を通して、引退馬問題前進の一助となれるよう、微力ながら馬事産業・文化に携わる人を発信していきますので、是非皆さまからのご応募をお待ちしております!
▼詳細は下記バナーをクリック!
こちらもチェック
▲ここをタップ / クリック
▲ここをタップ / クリック
▲ここをタップ / クリック
協力:松原 正文さん 取材・文:片川 晴喜 編集:平本 淳也 著作:Creem Pan
シャングシャング馬が春の山路を駆け上がる姿は、勇壮なエンデュアランス競技のようですね。
(あの勾配だと、上りよりも下りの方が怖そう😅)
冬将軍が去り、華やかな馬装と鈴の音が森羅万象に「目覚めよ!」と告げるお祭。
これからも、ずっと続けていただきたいです。
松原ステーブルスさんのことは、大雪の中から救出されたレイズアスピリット号の静養先として知りました。
富山県の特定非営利活動法人ピース・アニマルズ・ホームや乗馬連盟の尽力で一命を取り留めたレイズくんは、松原場長とスタッフの手厚いケアを受けて心身のコンディションを整えた後、石川県は奥能登の(お、今、角居先生のケハイが何気に横切ったような?👣…👣…👣…😶🌫️)ストローク乗馬クラブはなむけに移動して健在だとか。本当に嬉しいケースです。
レイズアスピリットの事件では、競馬ファンやメディアが競走馬/引退馬を見る視点、つまり「価値観」が、確実に変化しつつあることを再認識しました。そして、「価値観が変われば人は動く」ということも。
一頭の馬の命を救うために、これだけ多くの人が力を合わせることができる。
たった一つの命にもこれだけの重みと価値がある(と考える人が増えている)。
いや、「馬を一生面倒みたい」と思う気持ちは昔からあったと思うのですが、その気持ちを一人で持て余すことなく大勢の人が共有することで、思いを行動に移すことが日々可能になっている。
これは、まちがいなく良い流れだと思います。全ての命をあきらめていた時代もあったのですから。
>今後の目標は、耕作放棄の畑や田んぼ、空き家を活用し、馬と人とが暮らせる地域を作ることです。
松原ステーブルスさんは、“良き流れ” を推進してくださる代表格の一つだと思います。
お馬にたとえれば、リードホース。✨🐴✨
私は個人的に、セカンドまたはサードキャリア終了後の馬生の最終ステージが最も充実した環境であるべきだと考えていますので、馬の「終の住処」の選択が非常に重要になります。
お茶目からツンデレまで非常にカラフルな性格のお馬たちが、ヒトや犬猫などの異種動物と一緒にのんびり暮らす共生空間は理想的。この人獣共同体が「村」や「町」単位で実現することを支援していきたいです。😊👍