「流鏑馬×アイドル」というキセキの出会い by星野 菜々さん【桜花のキセキ】
「withuma.」vol.26 星野 菜々さん
Profile
お名前:星野 菜々さん
誕生日:4月21日
居住地:東京都
Twitter:@Nanaxouka
Instagram:@nanac0421
第26回は、星野菜々さん、馬事文化応援アイドル「桜花のキセキ」メンバーの女性です!
いったいどのような「withuma.」を送っていらっしゃるのでしょうか?
星野 菜々さんの「withuma.」
私が馬を知るきっかけとなったのは、馬事文化応援アイドル「桜花のキセキ」というアイドルグループのメンバーになったことがきっかけです。
幼い頃の夢は「アイドルになること」だった私ですが、桜花のキセキの加入前は一般企業に勤めていました。
その会社で出会ったパートさんから、乗馬や競馬に誘われていたのですが、なかなか思うように休みが取れずに、結局乗馬や競馬場に行くことはありませんでした。
ふとした時に「このまま、自分に興味があること、やりたいこともできずに時間が過ぎていくのは嫌だ!」 と思い転職サイトを見ていると、アイドルに憧れを抱いていたことを思い出し、オーディションサイトに行きつき、桜花のキセキの募集を見つけました。
興味があった乗馬や競馬をやりながら、昔からの夢だったアイドルができるなんて、いいこと尽くめでしかない!と思い、桜花のキセキのオーディションに応募しました。
そんな私が、桜花のキセキのメンバーとして活動する上で意識しているのが、今まで馬との関わりがなかった方に、いろんな形で馬に興味を持っていただきたいということです。
興味があるけどきっかけがない。
桜花のキセキに加入する以前の私のような方は世の中にたくさんいると思います。
そんな方達のきっかけに私がなれたらこんな素敵なことはないなと思っています。
『ホースメッセ』という、横浜の赤レンガ倉庫で行われているイベントがあるのをご存知ですか?
私が本格的に馬に魅了されるきっかけとなったのは、まさに2019年の1月に行われた、『ホースメッセ』です。
その時はイベントなどのお手伝いをさせていただいていたのですが、休憩中に"流鏑馬のブースがある"とマネージャーから話を聞き、今思うとその時は流鏑馬を生で見たこともないし、特段やりたいという意識があったわけでもないのですが、「ブースに行きたい!」と強く思ったのです。
そして、青森県十和田市にある「十和田乗馬倶楽部」のブースに伺ったところ、「桜流鏑馬」のポスターの日付が、見覚えのある自分の誕生日だったことから、マネージャーに対して反射的に、「私この大会に出たいです」と勝手に宣言し、返答を聞かずに十和田乗馬倶楽部のブースにいたスタッフの方に、「すみません、これ私でも出来ますか?」と聞いていました。
家に帰り、その日の夜に桜花のキセキ運営サイドに向けた「流鏑馬チャレンジについて」の企画書を作成しました。
(ホースメッセ「十和田乗馬クラブ」ブースにて)
実は、企画書自体をイチからを作るのは初めてで、サイトで調べながら見よう見まねで作成し、3日後には私が流鏑馬の合宿を行うことが決まっていました。
やったこともない流鏑馬になぜ、こんなに熱意を抱いたのか、今では本当に不思議な気持ちになります。
その後も、自分の中に現れた流鏑馬に対する熱意は冷めることもなく、色々と調べていくうちに、流鏑馬では「和種馬」という種類の馬が使用されることを知りました。
そして、その「和種馬」の活躍の場が今とても少なくなっていることを知り、「もっとこの業界を盛り上げていきたい!」と、冷めるどころか、そのことばかりに思いを馳せる日々になりました。
そして、流鏑馬チャレンジ合宿のクラウドファンディングを行い、資金を集めさせていただき、同年8月には「乗馬」も「弓道」も経験がない中で流鏑馬に挑戦し、さらには流鏑馬の新人戦に出場するという2週間程度の合宿をスタートさせました。
その合宿では、「飛(とび)」という一頭の流鏑馬ホースと呼ばれる流鏑馬競技に特化した馬と運命の出会いを果たし、'無謀'とも言われた挑戦は、周りの方の応援やサポートもあり、なんと新人戦では3位入賞を果たすことができました。
正直なところ、あの時、'3位入賞'という結果をいただいていなければ、「今も流鏑馬を続けていると思いますか?」と質問されて、「はい」と自信を持って答えられません。
あの時にあの結果があったから、たった2週間程度の合宿でしたが、'悔しい、もっと深く知って流鏑馬を盛り上げたい'と思えたのです。
その時は、なぜそんな感情になったのかはわかりませんが、おそらく何日も何日もかけて大会に向けて練習してきたことが、1走わずか10数秒で終わってしまう。 大会を通しても、その10数秒のために人も馬も頑張っているんだと、その流鏑馬の儚い美しさに魅了されたのかもしれません。
流鏑馬は基本的に、スタートで一度手を離したら、ゴールまでは手綱を握ることはありません。
手綱を放した後は、'舌鼓'や'追い鞭'などでスピードをコントロールします。
走っている時も、私の'舌鼓'の音に反応し、耳をこちらに傾けてくれます。
飛は、私が右も左もわからない時から、拙い私の指示を懸命に聞こうとしてくれました。
人間が愛情を注げば、不器用ながらも一生懸命に答えようとしてくれる。
その姿に胸を打たれます。
そういった馬の健気な性格や、少しずつお互いに理解し合い関係地を築き上げていく部分だったりが、とても魅力的に感じます。
(飛と同じ表情で写真を撮る星野さん)
2019年の大会後、新型コロナウイルスの影響により、2020年は全くと言っていいほど思うような練習や大会出場ができず、本格的に流鏑馬の練習や大会出場を行うようになったのは2021年からでした。
現在は、リース契約という形を飛と結び、練習に励むことになりました。
(※リース契約とは1年間のオーナー契約で優先的にその馬に乗ることができ、大会もパートナーとして出場することが可能です。)
2021年4月には、憧れの大会であった「桜流鏑馬」の初級の部に出場し3位入賞、新人賞を受賞いたしました。
そして、同年10月に行われた「世界流鏑馬選手権」の初級の部に出場した際には優勝し、弓使い賞までいただくことができました。
その後も、東京の方にいながらできる練習やトレーニングを行い、翌年の桜流鏑馬に向けて練習をし、2022年の4月に行われた「桜流鏑馬」の初級の部の優勝者になることができました。
その後、一つクラスがあがり中級クラスのプレイヤーになりました。
そして、ありがたいことに2022年はたくさんの大会を経験させていただきました。
同年6月 THRCホースショー流鏑馬大会 優勝
同年8月 八戸大会 一般の部 3位
同年10月 世界流鏑馬選手権 中級の部 3位
と、 出場した大会では多くの賞状を頂くことが出来ました。
ここまで来れたのは間違いなく、相棒である飛の力のおかげでした。
(2022 THRCホースショー流鏑馬大会)
(2022 八戸大会 一般の部)
(2022 世界流鏑馬選手権 中級の部)
素敵なお写真の数々から、流鏑馬の魅力が存分に伝わってきました!
ホースメッセでの直感的な出会いを受けて、すぐに流鏑馬の企画書を作成し、合宿へと行かれたその行動力が素晴らしいと感じました。
withuma vol.25 「元競走馬を引き取りオーナーに!数々の試練を乗り越え生まれた、人と馬の絆の物語。by 井口 久美子さん」でも、「まずは行動すること」が大切であると仰っていたように、星野さんも行動されたからこそ出会うことが出来た、今の流鏑馬ライフなのだと思いました。
流鏑馬はやはり神事のイメージが強く、流鏑馬体験ができる牧場・乗馬クラブがあることは認識していたのですが、競技として様々な大会が開催されていることは知りませんでした。
気になって色々を調べてみたのですが、流鏑馬競技連盟の規定により、和種・和種馬系を基本とすることがルールとなっているようです。
星野さんのおっしゃるように、和種馬の活躍の場が少ない今、貴重なお仕事の場でもあるのですね。
なにより、私が今まで見てきた神事では、和種馬ではない馬たちによるものが多かったので、その部分が新鮮でした。
Loveumagazine『「生かすことが幸せなのか」家畜商・X 1/3』にて、引退したサラブレッドや乗用馬などを、神社の祭事に貸出していると家畜商の方が仰っていました。
まさに私の地元・奈良県の春日大社「おん祭」では、いかにも筋骨隆々で馬格のあるサラブレッドや中間種などが流鏑馬奉納を行っていました。
競技としての流鏑馬では、的を正確に射貫くことが重要視されるのに対して、神事では儀礼や作法が重視されるそうで、そういった背景からも、なにかと利便性の高い軽種や中間種が用いられているようです。
引退馬の活躍する場として、こういった形もあるのだと感じていたのですが、見方を変えれば、数少ない和種馬が活躍する場所を取り合っていることにもなるのですね。
競走馬が引退後に乗馬として活躍すると、元々乗馬クラブにいた古馬の居場所がなくなってしまうという構図がありますが、流鏑馬の世界にも似たような難しさを感じました。
星野 菜々さんの「Loveuma.」
スーパーホースと呼ばれる飛は、安全面なども考慮され初心者の方を乗せることが多いです。
私も例外ではなく、馬場の練習をせずに始めたので、全く馬の扱いがわかっていませんでした。
それでも、飛は調教された通りに動きます。
乗馬倶楽部の練習走路であればスタートの位置、ゴールの位置を把握しています。
驚くことに、スタートで手綱から手を離せば、ゴールで勝手に減速をし、止まってくれるのです。
このように人の言うことをうまく聞き、乗りやすくていい馬だということは、初めから認識しておりました。
しかし、それが故に受けているストレスも馬側にはあるのではないかと、ここ数回の大会出場を通して考えるようにもなりました。
'飛に甘えてるだけではいけない。私と飛で流鏑馬をやりたいんだ'
そう思い、パートナー契約を結んだ以上はメリハリのある対応をし、飛任せの流鏑馬をしないようにしようと、心に決めました。
すると今まで、飛に対する思いや指示が一方通行だったものが、私が求めている時に、求めていることをしてくれているようになりました。
「練習だよー!」と迎えに行けば、飛の方からこちらに近づいて頭を差し出すようになったり、本当の意味でのコミュニケーションが取れるようになって来たのです。
飛とはまた別の馬の話ですが、人が近づくと、逃げたり後ろ蹴りをしてくる仔馬がいました。
当時、期間限定で十和田乗馬倶楽部のお手伝いをしていた私は、スタッフの方にお願いされ、毎日試行錯誤しながら、近づいたり触ったりしていました。
すると私が東京に帰る頃には、近づいても逃げなくなり、触っても後ろ蹴りをしなくなったのです。
そして月日が経ち、先日、大会前の練習をするために飛を迎えに行くと、なにやら後ろに甘えてくる馬の気配があり、何事かと思って振り向くと、まさにその仔馬がいました。
その時は「人に慣れてきたもんだな…」なんて思っていただけだったのですが、次の日も、そのまた次の日も、私に甘える様に近付いてきたのです。
この経験から、馬は人が手を掛けて思いを伝えると、懸命に応えようとしてくれるんだと学ぶことが出来ました。
他の競技者さんのブログを拝見すると、どうやら飛は日本語も通じるようで、まさにスーパーホースという名にふさわしい賢さですね!
その賢さに甘えないという星野さんの決心も、まさに'人馬一体'を体現しておられて、とても素敵だと感じました。
また、仔馬とのエピソードもとても興味深いものでした。
出会う人の想いが、馬の心を開かせる。
星野さんにとって貴重な経験になったと同時に、その仔馬にとっても大きな出会いであったのだと想像します。
引退馬問題について
馬に関するイベントに参加させていただいたり、競馬場に行った際に引退馬支援のグッズなどが販売されていたときは、積極的に購入させていただいたりしております。
また、グループとしても引退馬支援の活動をおこなってきた経緯もあり、引退馬支援対象のグッズを制作し、その売上の一部を寄付させていただいたりしております。
引退馬問題の解決に必要なことですが、まずは馬と人とが寄り添うことだと思います。
私は、「馬に自分のエゴを押し付けがちになっていかないかな?」と日々自分に問いながら、馬と接するように心がけています。
馬にとっての幸せに寄り添って考えること、理解しようとすることが大切になってくるのではないかなと思います。
その上で、人と馬とが今よりもっと気軽に出会える場所を作ることが大切だなと思いました。
桜花のキセキの活動を行う上で、やはり日本は海外と比べて、馬と人との距離が遠いように感じることが多くありました。
最近、競馬をやったことがない知り合いに、「興味があるけどなかなかきっかけがなくて…」という方がいました。
大人になると余計に自分の時間が減る為、なんでもそうだと思いますが、なにかきっかけがないと'その場'に踏み込めないものなのだなと改めて感じました。
私自身も、今でこそこう言った仕事をさせていただいているので、馬がいるイベントの情報が入ってきますが、幼い頃は全くと言っていいほど馬と触れ合うというイベントや機会がありませんでした。
多くの人が馬という生き物を理解し、共存を意識することで、'馬が活躍できるイベント'が増え、そうすることでそういった'馬と関わるきっかけ'ができ、今まで知らなかった人たちも馬たちに興味を持っていただけて、馬たちの活躍の場が増えていくのではないかなと思いました。
馬の考えていることをすべて理解する術はないので、私たちは私たちの頭で考えるほかありません。
ですがそのような中でも、星野さんの様に「人のエゴを押し付けてはいないか」、「馬の幸せとは何なのか」を、馬の立場に立って考え続けることが大切だと感じました。
流鏑馬のような伝統文化があるように、日本は馬との物理的な距離が、昔から近い国でもあります。
そして馬は家族の一員として、長い間我々の生活を支えてきた動物でもあります。
単に手段として考えると、確かに機械に頼る利点の方が大きいのかもしれません。
しかし、馬は手段以上の存在になり得る魅力をたくさん持っています。
安価で消費されるものが主流の現代だからこそ、改めて馬と共存することのメリットに目を向け、少しずつでも馬が活躍できる場を増やしていくことが大切だと感じました。
また、個人で引退馬支援に寄与されているほか、グループとしても支援をされているとのことで、実際に桜花のキセキさんの物販ブースには、「Loveuma.」のフライヤーも設置いただいております。
この記事をお読みいただいている皆様の中で、Loveuma.フライヤーの配布/設置をいただける施設様、団体様、個人の方がいらっしゃいましたら、是非ご協力をお願いいたします!
Loveuma.フライヤーの詳細はこちら
星野菜々さんがメンバーを務める、馬事文化応援アイドル「桜花のキセキ」はこちらです。
ご興味のある方は、是非チェックしてください!
今回は、馬事文化応援アイドルとして馬の魅力を伝える活動をされながら、流鏑馬界の新星として活躍をされている、桜花のキセキ・星野菜々さんの「withuma.」を伺いました!
毎週定期更新してまいりますので、次回もよろしくお願いいたします!
「withuma.」では、馬にまつわる活動や、その思いについて発信していただける方を募集しております。
リモート取材は一切なく、専用フォームからアンケートにお答えいただくと、その内容が記事になります。
今後も「withuma.」を通して、引退馬問題前進の一助となれるよう、微力ながら馬事産業・文化に携わる人を発信していきますので、是非皆さまからのご応募をお待ちしております!
▼詳細は下記バナーをクリック!
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協力:星野 菜々さん 取材・文:片川 晴喜 編集:平本 淳也 著作:Creem Pan
故・エリザベス2世女王陛下とお誕生日が同じ? なるほど、星野さんとお馬との浅からぬ縁を感じます。
表情が完全におそろいの写真が撮れるのも、しばらく会わなかった仔馬が「あそんでくれたお姉さんだ❣️」と覚えていてなつっこく寄ってくるのも、亡き英国女王と同じくらい馬の気持ちに寄り添える共感センサーを備えておられたからでしょう。(ホースメッセの流鏑馬ブースがトリガーとなって、眠っていたセンサーが発動したのかも....)
馬と人の距離を近づけるには、手始めとして、社会活動の様々な場面にポニーサイズの小型馬を広く導入することが有効ではないかと考えています。
大型の軽種・中間種に比べると、ポニーはより温順で人間との疎通性に優れ学習能力が高いという調査結果があり、大きさも手頃なので世話がしやすく親しみやすい。生きた文化遺産を保存するためにも、在来和種を中心とした競技会やホースショーを各地で普及させたいものです。
在来和種で特徴的なのは歩法ですね。私はアイスランド・ホースが好きなので、同じ側対歩をする遺伝子変異(運動神経の発達に関与するDMRT3遺伝子が2本とも変異している)を持つ道産子や木曽馬、宮古馬、与那国馬などにも親近感を覚えます。スーパー流鏑馬ホースの飛さんも、この遺伝子変異を受け継いで滑らかな走りができるはず。
スピードとスタミナを競うスポーツ系の近代競馬に加えて、在来和種ならではの歩容の完成度と騎乗者の所作の調和という “美技” を競う芸術系の競馬(くらべうま)があってもいいと思う。
四季の風景に雅やかな装束と馬装が映えて、観光アトラクションとしても成功しそうです。
星野さんと飛号のコンビで、桜流鏑馬・皐月流鏑馬・菊流鏑馬の〈やぶさめ三冠〉を狙うなんてどうでしょう?☺️