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"馬オタクの為のコミケ"? 馬にまみれる「上岡馬頭観音例大祭」🐴👨🏻‍🦲🪷



 

かつて育成牧場の場長を務め、現在は曹洞宗妙安寺の僧侶。

「ウマのお坊さん」こと国分二朗が、徒然なるままに馬にまつわる日々を綴ります。

 

馬にまみれる、馬のための法要


今日は2月19日。

わたしの務める埼玉県東松山市妙安寺にある、上岡馬頭観音の例大祭だ。

境内で「国の無形民俗文化財」に指定されている「絵馬市」も開催される。


朝の6時半に妙安寺へ到着。とにかく寒い。

重ね着しまくって良かったとホッとする。


今日は法要に参加する予定はなく、撮影担当の記録係だ。

とはいえ全くの私服というわけにもいかない。

僧侶である最低限の格好として「作務衣」ではありたい。

モコモコになるまで着込み、最後に作務衣を羽織った。

ミシュランマンに作務衣を張り付けたような不格好ではあるが、寒さ対策を優先した。


 


 

しかし、どうしてもピンポイントで頭だけは寒い。

これから昼にかけて、ますます強くなるという寒風「秩父おろし」が、こめかみに突き刺さる。

坊主頭の場合、冷気が侵食してくるのは剥き身の側頭部。

片頭痛を起こしかねないほど、キンキンに冷えていく。

すっぽりと毛糸の帽子を被りたいところだが、そうもいかない。

帽子は「僧侶っぽさ」も覆い隠してしまうからだ。


わたしが僧侶の格好にこだわるのには、もちろん理由がある。

「気がついてもらいたい」という、どストレートの自意識。

SNSなどで「ウマのお坊さん」を名乗り、馬に関する発言を続けている以上、自分自身を知ってもらうことも大切だ。


やがて7時過ぎ、日高市の「つばさ乗馬苑」から本日の神馬チームが到着。

白毛のサラに、栗毛の乗用馬、さらに可愛いポニーが2頭。

この例大祭(絵馬市)は馬にまみれる、馬の為の法要だ。

馬がいなくては始まらない。

撮影の仕事もここからだ。


馬の世界を辞して、改めて気が付いたことがある。

彼らは歩いているだけで、人を笑顔にさせる。

棟上げでばらまく餅やお菓子のごとく、人を笑顔にさせるナニかを盛大に撒き散らす。

その尋常ならざる癒し効果には、驚くばかりだ。

その場の空気を丸ごと変える馬達の到着で、絵馬市の雰囲気も平和に盛り上がってきた。


「絵馬市」の準備も始まる。

色とりどりの美しい手書きの絵馬が、1間3尺の戸板の上に積まれていく。

種類ごとに丁寧に並べ展示するのかと思ったら、そうではない。

ちょっと乱雑な感じで、ごちゃごちゃっと積んである。


絵馬の解説をする保存会代表の根岸さん
絵馬の解説をする保存会代表の根岸さん

洗練された宝飾店の

「いかかでしょうか?あなたのお気に召すものはございますでしょうか?うふふ」

ではない。

露店の

「どうよ!気に入ったもんあったら持っていってくんなっ!」

とぶっきらぼうな感じ。

これがいかにも「無形民俗文化財」的な情緒を一層盛り上げるではないか。


この戸板一枚が一店舗に割り当てられた敷地となるのが習わしだった。

今は絵馬市保存会の、この戸板一枚だけ。

だが記録の残っている昭和20年代には100枚以上。

それだけの店の数が境内に軒を連ね、絵馬を販売していたわけだ。

さぞかし活気もあったことだろう。


地域の実力者は自分の馬を飾りつけ、派手に装飾をしてやってきた。

つまりは馬のコスプレ。

そう、上岡馬頭観音例大祭は、馬オタクの為のコミケであった。

作家の絵馬を物色し、装飾を身に纏った馬を取り囲み眺めていたのだ。

最盛期の大正、明治初期には、この日に10万人の参拝者、1千頭の馬が祈祷を受けにやってきたというから、けっして大げさな話でもない。


つづく


 



文:国分 二朗

編集:椎葉 権成・近藤 将太

著作:Creem Pan


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