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【追悼・タイキシャトル】旅立つ前夜の様子と、在りし日の思い出

  • 執筆者の写真: Loveuma.
    Loveuma.
  • 2022年8月23日
  • 読了時間: 4分

更新日:2023年7月25日


 

2022年8月17日未明、ノーザンレイクで繋養していたタイキシャトル(認定NPO法人引退馬協会 所有)が永眠しました。

その追悼企画として、今回から2回にわたって、在りし日の思い出を紹介いたします。

スタッフ一同、心よりご冥福をお祈りいたします。


Loveuma.運営事務局

 



ファン、関係者から届いたたくさんの花が馬房を埋め尽くした

 

突然の別れだった。前日の夜飼い時も、いつもと変わらぬように見えた。厩舎を後にしたのは午後10時過ぎだった。明けて8月17日、朝はまた巡ってきたが、シャトルには新しい朝は来なかった。


亡くなる前日は変わらぬ様子で朝を迎えていた(2022年8月16日)


タイキシャトルが競走馬時代、とてつもなく強い馬という認識はあったものの、特に思い入れがあったわけではなかった。それでも毎週のように競馬場通いをしていたので、引退レースのスプリンターズSの時も中山競馬場にいた。最終レース後に引退式が予定されている中で、圧倒的な1番人気のタイキシャトルが敗れたそのレースはとても印象に残り、引退式もそのまま見届けて競馬場を後にした記憶がある。


到着後、放牧地に向かうシャトル(2021年6月16日)


引退して種牡馬になった後も、競走馬時代と変わらず特に気になる存在ではなかったし、種牡馬を引退してメイショウドトウとともに認定NPO法人引退馬協会の所有となった後も、気持ち的には変化はなかった。


2020年7月に川越と引退馬の牧場・ノーザンレイクを開場し、翌年6月にメイショウドトウとタイキシャトルの2頭が前繫養牧場から移動してきた。2頭ともビッグネームでファンも多く、引退馬協会のフォスターホース会員も満口に達している。川越は淡々としていたが、私自身は大きなプレッシャーを感じていた。だが2頭が到着してしまうと、待ったなしだ。できることを毎日続ける。それしかない。これは川越も同じだったと思う。


移動初日の夜


初日の放牧を無事に終え、放牧地から川越がシャトルを曳いて厩舎に戻る時、まだ落ち着かないのかチャカチャカしていた。馬房に収まったシャトルを見届け、川越が言った。


「さすがだな」


引き手から伝わってくる躍動感から、やはりシャトルは超一流馬だと感じたそうだ。川越はかつてシャトルのいた藤沢和雄厩舎で厩務員をしており、自らの担当馬がシャトルの隣の馬房だったことから、いつも間近で見ていた。だが現役時代のシャトルを曳いたことは1度もなかった。だからその当時と比較することはできないが、名門・藤沢厩舎でGI馬や重賞勝ち馬を担当した経験を持つ川越がうなるのだから、シャトルの歩様は相当素晴らしかったのだろう。


新聞用に撮影したツーショット(2022年8月14日撮影)


引退馬協会から預かっていたプリサイスエンドが3月に急逝して、しばらく牝馬3頭&猫のメトとの日々が続いていたが、ドトウとシャトルの2頭が加わり、ノーザンレイクも賑やかになった。(その後、7月1日にタッチデュールが加わり、女子チームは4頭になった)


新入りのタッチデュールを気遣うシャトル(2021年7月1日/当時は馬の並びが違っていた)


シャトルは最初、さほど噛み癖を見せなかった。私が飼い葉桶を回収したり、水桶に水を足しても時々しか噛まなかったし、噛み方も優しかった。だから気軽に馬房に出入りができていた。川越のことは記憶にあったのか、来て間もない頃からお手入れ中に足を踏もうとしていた。伸ばしてくる前脚をたくみに避けながら、川越はブラシをかけていた。以前も書いたと思うが、この癖は現役競走馬時代からのものであった。


ノーザンレイクに来た当初から繰り出していた足踏み技(2021年6月19日)


朝の放牧と午後の集牧は、私の担当だった。まさか自分が超のつく名馬を曳く日が来るとは夢にも思わなかったから、かなり緊張した。毎日毎日、ドキドキを押し殺しながら極力平常心でと言い聞かせながら、シャトルを曳いた。去勢していたこともあり、私の手に負えないということはほぼなかったが、時々気合が入ったように首をグッと下げ、引き手に漲るパワーが伝わってくることもあった。川越の言う、超一流馬の凄みは私にはわからなかったが、それでもその感触を少しでも経験できたことは貴重だった。


やがてシャトルは環境にも慣れ、私にも慣れてきたのか、噛み癖は頻繁になり、放牧前に無口をかける時も素直にかけさせなかった。その様子はまるでコントのようだった。そしてこれが元気のバロメーターでもあった。


毎朝の恒例だったシャトルとの攻防 それももうできない

(つづく)


 

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協力:ノーザンレイク・認定NPO法人 引退馬協会

文:佐々木 祥恵

編集:平林 健一

著作:Creem Pan

 


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3 Comments


霊前のバナナに号泣! 不覚です。

あふれる花々と気高い遺影にふさわしく、優雅に涙を流したかったのに。

実は私も、元々タイキシャトルに対してそれほど強い思い入れはありませんでした。もちろん、数々の偉業を成し遂げた名馬であることは知っていて、尾花栗毛のハンサムホースだということもわかってはいましたが…以前はシャトルの日常に関する情報発信が少なかったこともあって、特に注目してはいなかった。

羊と混合放牧されていた時も、シャトルはどちらかと言えば無反応に近く、加齢と共に好奇心も衰えているのかな?ぐらいの、おとなしいご隠居さんのイメージでした。(注:混合放牧の主目的はシャトルの孤独を慰めることではなく、異種動物が馬の寄生虫を食べることで虫の生活環を断ち、耐性寄生虫の発生をできるだけ抑えること。この点、羊さんたちは十分頑張っていたと思います。🐑🐑🐑🐑🐑)

その印象が180度変わったのが、ノーザンレイクに転居後。

小気味よい音と共に放牧地の青草を威勢よく噛みちぎり、食って食って食いまくるシャトルの映像を見た時、ええっ、これがあの、ご隠居様!?と驚いた。まるで、経口食に戻って自力で咀嚼することで脳が活性化され、すっかり若返ったヤンチャなシニアを見ているようでした。

「仲間が見える所で同時に草を食む」という生活が、馬にとって一番自然で健康的な暮らし方なんだと再認識した次第です。

気持ちが若返りすぎて中の人たちを随分手こずらせたようですが、そんな様子をこまごまと伝えていただくうちに、シャトルが大好きになりました。だから、お別れは本当につらかったけれど、この「大好き🥰」がずっと続くことは嬉しい。私にとって生涯忘れられない一頭になりました。


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Guest
Aug 23, 2022

タイキシャトル、楽しい時間をありがとう。

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本当に楽しい時間でしたね。きっと、シャトル自身にとっても。

ノーザンレイクの個性的で温かくて愉快な仲間たち(中の人含む)に囲まれて最後の日々を過ごしたことは、引退馬にとってかけがえのない贈物だったと思います。

こんな贈物を受け取る馬が一頭でも増えるように、自分にできることをしていきたいです。

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