馬は人を乗せずに、月8万円稼げるか?|名伯楽・角居勝彦の挑戦 2/4
歴史的名牝ウオッカをはじめ、種牡馬としても活躍中のエピファネイアやルーラーシップ、国外でも活躍したヴィクトワールピサやデルタブルースなど、数々の名馬を管理してきた角居勝彦元調教師。2021年に調教師を早期引退すると、家業を継ぐとともに地元・石川県で引退馬支援の活動を開始した。調教師として多くの馬と触れ合い、多くの夢を掴み取った名伯楽の目には、今、どのような第二の夢が映っているのだろうか──。
今回は石川県の能登半島で過ごす角居さんに、自身の掲げる引退馬支援への想い・ビジョンを伺ってきた。
まだまだ種蒔きの段階
いわば「アスリート」として洗練されて気が立った状態だった馬を、元来、彼らが持っているニュートラルな好奇心の強さや人との親和性の高さが優位になるような状態に戻してあげることで、もう一度人との接点を創出できる。実際にタイニーズファームの馬たちは、ふれあい体験で子どもたちに曳き馬をしてもらったり、牧場の近くにある鉢ヶ崎海岸のゴミ拾い活動へ参加するなど、地域住民との関わりを積極的に行うことで人との交流の機会を増やしている。
写真(1枚目):子供たちの曳き馬体験(株式会社Creem Pan)
写真(2、3枚目):鉢ヶ崎海岸のゴミ拾い活動(一般財団法人ホースコミュニティ 提供)
海岸ではリクエストがあれば、観光客や地域の子どもたちを馬に乗せたまま海に入ったり、尻尾を掴んだまま泳いでもらったりと、ちょっとした非日常的な遊びを体験してもらっている。小さな子どもたちの中には、馬を見つけて「お馬さんだ!」と近くまで駆け寄って来るものの、その大きさに固まってしまう子もいるそうだ。
写真:海岸近くに設置された各トレッキングの案内(株式会社Creem Pan)
「乗るか聞いても『乗らない』って(笑)。それでも馬が海の中に半分くらい浸かってしまうと、浮き輪で泳ぐ子供たちと目線の高さが合うので怖さが無くなるみたいです。そこでもう一度乗ってみるか聞くと、乗ってくれたりしてね。そうやって少しずつでも、馬との関わりが増えてくれたら良いなと感じています」
土日には観光客も多いため海岸にいることが多いが、それ以外の日は活動の規模を大きくしようと、新しく馬を預けられる牧場を作る動きを進めている。現在は、地域全体に馬が馴染んでいくような風景になるように珠洲市と協力しながら環境を整えているところで、ビジネスとしてはまだまだ種蒔きの段階だ。今取り組んでいる地域住民との交流活動の他に、きちんとした住民説明会も開かなければいけない。ただ、ハードルはまだまだあるものの、意外にも想定していたほどの抵抗感はないと感じているのも確かだ。
しかし、この取り組みそのものが実験的な要素が多いこともあって、まだ大きな手応えが得られているわけではない。引退馬の“その後”について興味を持つ人が増えていることはわかっているものの、そのような人たちからの寄付金だけでこのような活動がずっと続くわけではないとも思っている。
「やはり馬が自立してお金を稼ぐというプログラムをつくらなければいけません。観光業では今までもそれぞれやっていたと思うのですが、それすらこぼれてきている馬たちがいるので、それ以外にどんな役割を作ってあげられるかを考えていく必要があります。そして、それをお金に変えられるのかというのも大きな課題です」
1頭月額8万円
それでは一体、そのような馬たちに何ができるかと角居さんに聞くと「草食ってうんこするくらい」と冗談まじりに笑う。しかしその馬糞は、草が腸内微生物の働きによって簡単な発酵が進んだような状態であるため、堆肥としての活用が可能だ。これが牛のように反芻をする動物では糞の臭いも取れにくいのだが、馬の消化系統は一つの簡単な流れであることから、臭いもそこまでキツいことはなく、含まれる栄養価も高い。そこで角居さんは、馬とその糞が害にならないということを地元の方々に知ってもらうための取り組みとして、馬糞に水と「バクチャー」と呼ばれる微生物の活性剤を入れて、空気を送ることで、臭いが少なく微生物も多く含まれた有機肥料の開発に着手している。この取り組みには、近隣のお米農家の方も興味を持ってくれているという。
写真:タイニーズファームに設置された、有機肥料の開発機器(株式会社Creem Pan)
また、草を食べている姿を見るだけで心が癒されるという人もいることからメンタルケアにも繋げることができないかなど、馬たちが自らの力でお金を生み出していくための様々な道を模索している。例えその背中に人を乗せなくても、耕作放棄地の草刈りから始まり、さらにそこから出てくる馬糞は農家の肥料として循環するというような形で経済活動に参加できる……という仕組みを構築していけるのが理想だと、角居さんは語る。
「当然、私自身も馬が農産物という認識が全くないわけではないので、屠畜ということについては必ずしも悪ではないとは思っています。しかしサラブレッドが競走馬として生まれてきたのであれば、彼らに向けた努力はギリギリのところまでしたいんです」
奥能登だけで少なくとも100頭程度は面倒を見られる環境を作っていきたいと語る角居さん。そのためにはスタッフも増やさなければいけないし、そのスタッフが生活するだけのお金も生み出していかなければならない。角居さんの思い描く理想は、乗馬クラブで役を終えた馬たちを1頭月額8万円程度で預かって、それと同じだけの金額をその馬自身が稼げる状態にしていくことだという。東京の乗馬クラブに預託するともっと高額の費用がかかることを考えれば、その馬がその場所で生きていくためには最低限必要な金額と言えるだろう。それでいて、狭い馬房の中に閉じ込められることもなく、伸び伸びと草を食べ続けられるような環境の下で過ごせるのであれば、そう高くはないと言えるのかもしれない。まして東京から能登空港までは飛行機で1時間ほど。能登空港からタイニーズファームまでは車で約40分だという立地を考えれば、軽井沢などに馬を置くこととそこまで大きな差はないのではないだろうか。この「8万円」という金額には、人件費や土地代などは計算されていないため、それらを考慮すれば、倍の16万円を稼ぎ出せる状態にしてあげられることが「理想」なのだと角居さんは言う。
「場所によれば、馬1頭を飼える環境のプライベートビーチ付き一軒家がありますし、現地での生活費も関東近郊と比べれば抑えられるはずです。ぜひ皆さんにそういった場所を確保していただいて、東京で仕事がある時には私たちのところに馬を預けて行ってもらえたらと思います」
(つづく)
取材協力:
角居 勝彦(みんなの馬株式会社 COO)
一般財団法人ホースコミュニティ
タイニーズファーム
文:秀間 翔哉
デザイン:椎葉 権成
協力:緒方 きしん
取材・監修:平林 健一
著作:Creem Pan
監修者プロフィール:平林健一
(Loveuma.運営責任者 / 株式会社Creem Pan 代表取締役)
1987年、青森県生まれ、千葉県育ち、渋谷区在住。幼少期から大の競馬好きとして育った。自主制作映像がきっかけで映像の道に進み、多摩美術大学に進学。卒業後は株式会社 Enjin に映像ディレクターとして就職し、テレビ番組などを多く手掛ける。2017年に社内サークルとしてCreem Panを発足。その活動の一環として、映画「今日もどこかで馬は生まれる」 を企画・監督し、2020年に同作が門真国際映画祭2020で優秀賞と大阪府知事賞を受賞した。2021年に Creem Pan を法人化し、Loveuma. の開発・運営をスタートする。JRA-VANやnetkeiba、テレビ東京の競馬特別番組、馬主協会のPR広告など、 多様な競馬関連のコンテンツ制作を生業にしつつメディア制作を通じた引退馬支援をライフワークにしている。
馬が2頭亡くなったと聞きました
適正飼育、適正飼養管理も出来てないと聞きました
引退馬支援の広告塔のような方が
そんな感じで馬を預かってるのを知りがっかりしました
私は、某大学の乗馬クラブで練習馬として頑張って大会等にも出ていた栗毛の馬を自馬にしませんか?と言うお話を一昨年、受けました。JRAから新しい馬が入厩する為に出される形になったようです。北海道へ渡そうか?と言う話しもあったそうですが、先行きも不明で不安でしたので、自馬に迎える事にしました。
元、馬場馬術でご活躍された選手の方のプライベート牧場へ縁があって預け、作業は自分達でやる!その代わり牧場オーナー元選手の方が週末にレッスンをしてくれると言う場所で、月7万でその馬を置いていました。そのプライベート牧場が自宅から車で10分の場所だったので可能でしたし、馬名も競走馬時代のそのままでしたので、血統や以前の活躍や苦戦ぶりも分かりました。私もそんなに若くはなく(笑)作業がキツくなり体力が続かなくなり…現在は同オーナーさんの所有馬になり、その牧場で元気に過ごしています🍀
万が一この仔を手放す様な環境になれば連絡をもらう様にしています。
この牧場での体験では、腸捻転を起こした馬を最後の時まで見届けました。安楽死をさせると言う現場を目の当たりにしました。その後の処理もまた…とても信じ難く辛い経験でした。
この年でもずっと馬が好きなので、現在は乗馬クラブに所属してしています。今年で3年目です。ですが、最近、クラブに新しい馬が入ってくると、以前から居た馬が居なくなる…という現象が起きていた事に気がつきます。若い馬と入れ替えに何処かへ消えてしまっている…考えたくはないが検討はつきます。乗馬になっても、、人の為に生きて、頑張って人を乗せてくれたその馬達も、お役目ごめんとなると呆気なく馬運車に乗せられてしまうのか。。と、とても哀しみでいっぱいです。養老牧場へと導かれ生き残れる馬はG1で成績をあげ種牡馬になるか、また人の為に生かせられる意味のある馬だけ…。競走馬から乗馬になっても、お仕事!お仕事!手荒い乗り方をされて、文句も言おうものなら躾と代して殴られていたり…💧見ていて辛い場面も正直ありました。馬が人間不信になっても当然ですよ!競走馬として産まれ、半年後には親から引き離され、人の指導に忠実にと教えられ、そして最後もまたその馬生は人によって破壊され続けていて…
本当の幸せってなんだろうか?
人が思う様に馬は喜んでいるのか?
殺処分よりは生きてて欲しい…
それも人間のエゴなのかもしれない
🔸産まれてくる頭数が多過ぎるから
強い馬を求め続ける人間が存在する限り、競馬が廃らない限り…引退馬のその余生は不安でしかない。
🚼競走馬→引退→乗馬etc→引退→養老牧場…最後はタイキシャトルの様に老衰で自然界に全頭を返してあげたい。。それに近づけるシステムが出来上がって欲しいと真摯に願います。
🔸何処かへ訴え、法律自体が変わり、生産牧場の方々にもそれが統一する様な、新たな法律の元に馬が救われて欲しい。
蛇口を止めないとって…
自分の想いを訴えられる場所が無いので、つい長文で何度も投稿してしまいました。。
⚪︎総ての引退馬に保険制度を🙏
引退後に40万が支払われれば、、
リトレーニングの費用になり得ます
半年間リトレーニングを受けられれば、馬の受け入れ先は増えるはず!
⚪︎馬主さんはこう言った引退後の保険に加入する事を条件としたら良いのではないでしょうか…♡
⚪︎自馬が引退後、40万給付
譲ってくださる馬主さんへ10万円
(お肉にした方のが高額だけど、生かしてあげたい!と思ってくれる事を前提に…。)
残り30万をリトレーニング代。。
TCCさんのやり方、引退馬協会さんのやり方、各乗馬クラブ、牧場経由、個人で引退馬を持たれる方もいるので。馬達が引き取られ易い環境にあれば、必ず生きてゆける第二の馬生の道が開けると思います✨
①引退馬→②リトレーニングって形が当たり前になって欲しいです!
③リトレーニング後→個々へ売却🍀
一般人の為のJRA乗馬クラブが出来たら最高だと思います。
全国に発信してゆく取り組み!
馬が自立してお金を稼げる様に、
真剣に考えないとって…
人の支援だけでは
その馬の一生を支えては行けないし
どこからかを
変えなきゃいけない
本来ならば産まれすぎる馬達の
根元を締める事が出来ならなぁ…🚰
コミュニケーションも取れる
人を癒やす事もできる
本来は優しい動物
馬と言う動物が家畜に
属されてるのが…本来イヤです。。
広島県の動物愛護団体
ピースワンコさんでは保健所に収容された、、
最後の日を迎えざるを得ない犬、猫達をシェルターから〈全頭〉引き出しています。その為広島県のドリームボックスはもう何年も稼働しておらず、殺処分は行われていない。
⚪︎馬にも貰い手
⚪︎行き先のアテが増えれば、、
だけど毎年7千頭近くの出産がある
競走馬を毎年救い出せる訳もないし
肉にしてしまう馬主さんを攻めることもまた違うと思うし、、
だけどなんとか馬を助けてあげたい
未勝利でも、訳あり引退する
馬達にも生きる希望はあって良い。
⚪︎厩舎の方からの情報を得て、こんな馬が居ます、引き取ってみませんか?って言う掲示板みたいな形で
(競走馬命は伏せて)なんとか肉になる前に救えないのだろうか?
走らなくても、乗馬にむく大人しい馬もいると思います。
殺処分の前に…
もう一段階、馬達の情報が欲しい。
リトレーニングしてくれる施設が、もっと気軽に出来たら良いですね。。
問題は。。
費用がかかり過ぎるので
引退馬の共同牧場とか!
JRAで協賛して引退馬を
自馬にできたら最高ですね!!
大手乗馬クラブのクレインみたく
JRAが全国に乗馬クラブを設立してくれないものだろうか、、バジガクさんとダッグを組めば生徒さん達の就職場にもなるし。。etc
普通より安く自馬がもてれば
是非、また自馬を持ちたいです🐴
馬糞堆肥のお話に注目。
以前、関浩一(せき・ひろいち)さんの土壌改良プロジェクトの記事を読んだことがあります。茨城県のつくば牡丹園とつくば薬草研究所の園長所長を兼務しておられる方です。
関さんプロデュースの研究開発プラットフォームでは、主に美浦の牧場から出る競走馬の糞の堆肥化事業を手がけ、鶏糞・牛糞・豚糞に比べて抗生物質の影響がほとんどない(=ヒトに移行する多剤耐性菌のリスクがほぼない)サラブレッド堆肥を開発して好評だとか。
ざっくり比較しますと、
鶏糞堆肥:植物性有機物がほとんど添加されておらず、糞のみ
豚糞堆肥:糞の割合が多く、籾殻(もみがら)やおが粉との割合が7:3
牛糞堆肥:籾殻・おが粉と糞の割合が5:5
馬糞堆肥:一割が糞で、9割が植物性有機物(落ち葉、稲藁、籾殻etc.含む)
柔らかい肥えた土をつくる力は馬糞堆肥が一番高く、肥料効果というよりは地力(ちりょく)を上げるための土壌活性剤として効果を発揮する。
そこで関さんらは、厳しいドーピング規制により薬剤投与の少ないサラブレッドの堆肥に注目し、他にも様々な資材を加えて、「(鶏糞同等の)肥料効果」と「土壌改善効果」を兼備する製品を開発した。。。のですが、「1日30トンしか作れないため、茨城の県南地区の農家さん分しか配布できません」(2020年の談話)
なので、将来的には量が確保できる牛糞堆肥の研究改良・活用も考えているそうです。
ここで、全国の引退馬の皆様に声を上げていただきたい。
いやいやちょっと待って! サラブレッドは現役馬ばかりじゃないんですよ!
引退してもきちんと草やニンジンを食べてお役に立つボロをどっさり出せるんですよ!と。
🐴🐴🐴🐴🐴🐴🐴
牛さんには悪いけど、引退馬の頭数をもっともっと増やして、全国の農家や園芸家に行き渡るだけの優良堆肥の原料を安定供給できるようになればいいと思います。
グリーンチャンネルやNHK-Eテレに引退馬専用の番組を常設して、馬糞堆肥を活かした農業、花卉栽培、バイオマス発電などを奨励してほしい。角居先生プロデュース、珠洲ブランドのサラブレッド堆肥を楽しみにしております。
(書き込みしただけなのに農作業なみに気持ちよく疲れました🧑🌾)