トーセンラー、ダノンバラードを完封!ケガを乗り越えて挑戦を続けた「夏巧者」 vol.45
かつて観衆を沸かせた名馬の"今"を紹介!
走り終えた今も、観衆を魅了したあの日の輝きは、決して色褪せない。
全国で暮らす、名馬の個性と"今"を集める『ウチの子はあの名馬!個性にLOVE❤︎ 引退馬コレクション』をお届けします!
今回のコレクションは、2012年の小倉記念(G3)などを制した、エクスペディション!
現在は、鳥取県西伯郡大山町にある、大山乗馬センターで暮らしているとのこと。
そのお世話をしている馬野さんにマル秘情報をたくさん聞いちゃいました!
馬野 大将さん
(大山乗馬センター 乗馬インストラクター)
ウマ歴:13年
出身地:鳥取県
趣味:自転車、水泳、ランニング
休日の過ごし方:晴れた日は自転車でロングライド
エクスペディション
ニックネーム|エクスぺ、スケさん
生年月日|2007年5月17日
生産者|社台コーポレーション白老ファーム
馬主|社台レースホース
戦績|26戦6勝(2着5回,3着1回)
獲得賞金|1億6,529万円 (中央)
主な勝鞍|2012年 小倉記念(G3)
父|ステイゴールド
母|ビーモル
母父|Lyphard
ここにきた日|2014年6月5日
3歳7月にデビューも、初戦で菊花賞馬に肉薄
エクスペディションの競走馬デビューまでの道のりは、大変険しいものでした。
2歳9月にゲート試験を合格するも、両前脚トウ骨に炎症が見られたため、デビュー構想を延期して、レーザー治療を施しつつ調整。
なんとか体勢が整い、想定よりも遅れた3歳1月にデビュー戦が予定されましたが、今度は出走日直前に全治3ヶ月の骨折が判明。
度重なるアクシデントの末、なんとデビューを果たしたのは3歳7月の未勝利戦でした。
そのデビュー戦では13番人気という低評価、かつ大きな出遅れを喫しましたが、道中で中団までポジションを押し上げると、直線でも脚を伸ばして既走馬相手に単独2着を確保。
ちなみに、この時の1着馬は、3ヶ月後の菊花賞(G1)を制するビッグウィークでした。
その後、2走目の3歳未勝利ですんなりと勝ち上がったエクスペディションは一度休養に入り、翌年2月に山国川特別(4歳以上500万下、現・1勝クラス)を勝ち上がると、夏からは充実期に突入。
7~8月の2ヶ月間で条件戦を3連勝し、堂々のオープン入りを果たします。
トーセンラー、ダノンバラードらを破って重賞初制覇
しかし、楽な勝ち方で3連勝を飾った夏までとは一転して、年末から挑んだ述べ4戦のG3は、いずれも上位人気ながら最高着順が4着と、重賞の壁にぶち当たります。
それでも挫けることなく挑戦を続けるエクスペディションは、2012年8月の小倉記念(G3)に出走。
ここでの1番人気は、オルフェーヴルが優勝した2011年の菊花賞(G1)3着馬で、後にマイルCS(G1)を制するトーセンラー。
2番人気には、後にAJCC(G2)を勝利し、宝塚記念(G1)でゴールドシップの2着となるダノンバラードがいるなど、G3ながらレベルの高いメンバー構成でした。
レースは、出脚が鈍く後方からとなったトーセンラーに対し、エクスペディションは、いつも通り中団を追走する形で1・2コーナーをカーブ。
向こう正面では一度2頭が並ぶ形になりますが、勝負所で先に仕掛けたエクスペディションが、直線で上がり最速の豪快な脚で抜け出すと、その後方から脚を伸ばしたトーセンラーとダノンバラード、外から追い込んできたナリタクリスタルなどが捉えに行くも、時すでに遅し。
後続を突き放し、差を広げたエクスペディションが、リードを守り切って先頭でゴールし、5度目の重賞挑戦で遂に初タイトルを手にしました。
第48回 小倉記念(G3) 2012.8.5 小倉 晴・良 芝2,000m 12頭
着順 | 馬番 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | タイム (着差) | 単勝オッズ (人気) | 調教師 |
1 | ⑩ | エクスペディション | 牡5 | 浜中 俊 | 1:57.3 | 7.9③ | 石坂 正(栗東) |
2 | ⑤ | トーセンラー | 牡4 | 川田将雅 | 2.1/2 | 2.7① | 藤原英昭(栗東) |
3 | ⑪ | ナリタクリスタル | 牡6 | 武 豊 | 3/4 | 24.6⑨ | 木原一良(栗東) |
4 | ④ | ダノンバラード | 牡4 | 小牧 太 | 1.1/2 | 3.0② | 池江泰寿(栗東) |
5 | ⑫ | ゲシュタルト | 牡5 | 中井裕二 | 1/2 | 20.3⑧ | 長浜博之(栗東) |
セカンドキャリアでの思わぬ再会
その後、エクスペディションが勝利を挙げることはありませんでしたが、2013年の鳴尾記念(G3)でトウケイヘイローに0.2秒差の2着、同年の新潟記念(G3)ではキャリア23戦目にして初めて逃げる競馬で2着に粘るなど、「夏巧者」として重賞戦線で存在感を発揮しました。
そして、2014年5月の新潟大賞典(G3)を最後に競走馬登録を抹消。
翌月には大山乗馬センターへ移動して、乗馬としてのセカンドキャリアをスタートさせました。
そして6年後の2020年3月、大山乗馬センターに1頭のG1ホースが仲間入り。
その馬こそ、なんとエクスペディションがデビュー戦で肉薄し、後に菊花賞馬となった、ビッグウィークでした。
10年越しに思わぬ再開を果たした、かつてのライバルである2頭は、現在も、ここで共に余生を送っています。
「人懐っこさ」が☆5とのことで、ふれあいにもピッタリの馬ですね!
「繊細さ」☆5が示すように、根は繊細な馬のようですが、近年は少し成長したようで…?
担当している馬野さんに、エクスペディションの"印象的なエピソード"を聞いてみました!
「12歳ぐらいまでは放牧場に向かうときに立ち上がったり走ったりしていましたが、現在は気持ちをコントロールできるようになり、落ち着いて、ついてくるようになりました。」
なるほど、気持ちのコントロールができるようになったのですね。
乗馬としての素質が磨かれている証かもしれませんね!
エクスペディションのクリンクリンな瞳
リグヴェーダ(左)とエクスペディション(右)
スキスキのリグヴェーダは、JRAで4勝を挙げた元競走馬。
兄弟にはG1ホースのゴールドアリュールや、ペルシアンナイトの母・オリエントチャームなどがいる良血馬です。
写真は、リグヴェーダ宛に送られてきた生牧草を分けてもらっているエクスぺ。
つまみ食いしても全く怒られないのだとか。
生牧草を食べるエクスペディション
エクスペディションの誕生日会
多くのお客様から誕生日を祝ってもらったそうです!
中国地方最高峰である大山が見えるセンターで功労馬としてゆっくり過ごしています。
放牧場や厩舎見学ツアーで会うことができますので、ぜひ会いに来てください。
クリンクリンな瞳で見つめて迎えてくれますよ。
馬野さん、エクスペディションのマル秘情報をたっぷりご提供いただき、ありがとうございました!
なお、エクスペディションの見学は、受付にて「厩舎ガイドツアー」を申し込んでいただくと、いつでも見学が可能とのことです。
なお、1日1回無料の厩舎ガイドツアーを開催しておられます。
開催時間は、大山乗馬センターさんのSNSをご確認ください。
そして、その大山乗馬センターさんのSNSからも、エクスペディションの姿をチェックできるので、ぜひフォローしてみてください♫
X(旧:Twitter)|@daisen_johba
Instagram|daisen_johba
Facebook|大山乗馬センター
WEBサイト|http://www.daisen.net/uma/
協力:大山乗馬センター
取材・文:片川 晴喜
デザイン・編集:椎葉 権成
監修:平林 健一
制作:Creem Pan
著作:Creem Pan・GJ
過去の『引退馬コレクション』はこちら👇
supported by
Comments