横山典弘騎手と重賞初制覇!富菜牧場の「親分」は、弱きを助け強きを挫く、仔馬たちみんなの"姐さん"に! vol.44
かつて観衆を沸かせた名馬の"今"を紹介!
走り終えた今も、観衆を魅了したあの日の輝きは、決して色褪せない。
全国で暮らす、名馬の個性と"今"を集める『ウチの子はあの名馬!個性にLOVE❤︎ 引退馬コレクション』をお届けします!
今回のコレクションは、2007年のキーンランドC(G3)などを制した、クーヴェルチュール!
現在は、北海道浦河郡浦河町にある、富菜牧場で暮らしているとのこと。
そのお世話をしている冨菜さんにマル秘情報をたくさん聞いちゃいました!
冨菜 綾乃さん
(合同会社 富菜牧場 代表)
ウマ歴:牧場生まれなのでウマ歴=年齢です!
出身地:北海道浦河町
趣味:漫画を読むこと
休日の過ごし方:ドライブ、はしご酒、映画鑑賞など
※写真は、牧場猫の「ミケ氏」
クーヴェルチュール
ニックネーム|親分(おやびん)、チューちゃん
生年月日|2004年2月14日
生産者|富菜牧場
馬主|ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン
戦績|16戦5勝(2着1回,3着1回)
獲得賞金|1億2,777万円 (中央)
主な勝鞍|2007年 キーンランドC(G3)
父|ブラックホーク
母|ヒカリクリスタル
母父|ラッキーソブリン
ここにきた日|2009年4月
生まれ持った「親分」の資質
バレンタインデーの2月14日に生まれたことにちなみ、フランス語で、製菓用に広く用いられるカカオ分35%以上のチョコレートを指す「couverture(クーヴェルチュール)」が馬名の由来となり、現在も富菜牧場の「親分(おやびん)」として、多くのファンに親しまれているクーヴェルチュール。
同馬は生まれながらにして激しい気性と高い知能を有しており、国枝厩舎に入厩してからも先輩古馬たちが委縮するほどの貫禄で、初めての調教から隊列を率いて堂々と先頭を歩いていたといいます。
そんな「厩舎のボス」は、2006年6月の2歳新馬でデビュー戦を勝利すると、3戦目の条件戦も逃げ切って早くもオープン入り。
次走のすずらん賞(OP)では、直線で逃げ馬が壁になった際に、「アンタ邪魔よ!どきなさいよ!」と言わんばかりに、隣の馬を吹っ飛ばして進路を確保する豪快な競馬で1位入線を果たしましたが、ここでは“親分の貫禄”が裏目に出てしまい、進路妨害によって10着に降着となりました。
しかし、続く福島2歳S(OP)では好位から直線で抜け出すスマートな競馬で、しっかりと勝利をものにしました。
名手・横山典弘と共にローレルゲレイロらを破って重賞初制覇
年が明けて3歳となったクーヴェルチュールは、牝馬クラシック路線へと駒を進めるも成績が振るわず、桜花賞(G1)12着後に休養へと入りますが、復帰初戦のバーデンバーデンC(OP)では、初めての古馬との対戦ながらハナ差の接戦を制してキャリア4勝目。
続くアイビスサマーD(G3)でも持ち前のスピードを活かして抜け出すと、最後までよく粘っての3着に好走し、次走では初のコンビとなる横山典弘騎手を鞍上に迎えてキーンランドC(G3)に出走。
ここでの1番人気は同年のNHKマイルC(G1)で2着となったローレルゲレイロ、2番人気には前走で函館スプリントS(G3)を優勝しているアグネスラズベリがいるなど、マイル以下の重賞戦線で活躍する馬たちが馬柱に名を連ねました。
レースは、下馬評通り逃げの手に出たサープラスシンガーを見る形で、クーヴェルチュールは2番手を追走。
直線に入って逃げ馬を交わしたクーヴェルチュールが抜け出したところに、大外から追い込んだアグネスラズベリ、馬群の間を割って伸びてきたワイルドシャウトが猛追しましたが、最後は半馬身凌いで初重賞制覇。
テン乗りながら、気性の激しい同馬をしっかりとエスコートした、ベテラン・横山典弘騎手の手腕も光ったレースでした。
キーンランドC(G3)優勝時(提供:富菜牧場)
第2回 キーンランドC(G3) 2007.8.26 札幌 晴・良 芝1,200m 15頭(1頭取消)
着順 | 馬番 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | タイム (着差) | 単勝オッズ (人気) | 調教師 |
1 | ⑭ | クーヴェルチュール | 牝3 | 横山典弘 | 1:08.6 | 7.1④ | 国枝 栄(美浦) |
2 | ⑪ | アグネスラズベリ | 牝6 | 角田晃一 | 1/2 | 5.4② | 西浦勝一(栗東) |
3 | ⑦ | ワイルドシャウト | 牡6 | 岩田康誠 | ハナ | 5.9③ | 和田正道(美浦) |
4 | ④ | ブラックバースピン | 牡4 | 池添謙一 | 1/2 | 7.9⑤ | 手塚貴久(美浦) |
5 | ⑮ | エムオーウイナー | 牡6 | 小牧 太 | 1/2 | 14.4⑧ | 服部利之(栗東) |
引退後、繁殖牝馬を経てリードホースに
キーンランドC(G3)優勝後には、同年のスプリンターズS(G1)で0.6秒差の8着、続く福島民友C(OP)では2着となりましたが、その後も勝利を挙げることはできず、2009年4月に登録を抹消。
繁殖牝馬として故郷の富菜牧場に戻ったクーヴェルチュールは、2020年の産駒を最後にリードホースへと転向し、現在も同場で「親分(おやびん)として慕われながら余生を送っています。
「かしこさ」、「食欲」、「積極性」が☆5なのですね!
馬に対しては、ある程度外向的なようですが、「人懐っこさ」は☆2とのことで、心をゆする相手は選ぶタイプなのでしょうか?
担当している冨菜さんに、クーヴェルチュールの"印象的なエピソード"を聞いてみました!
「生まれ持った激しい気性と、人間並の知能の高さで、エピソードには事欠かないのですが、最近だと生後1ヶ月で母馬を亡くした子馬の子守りをしてくれています。
強くて、弱い者には優しいところが本当に親分そのものです。」
「親分」と呼ばれる所以が、よく伝わってくるエピソードをありがとうございます!
弱きを助け強きを挫く、"馬徳"(?)のある馬なのですね!
「テンションが上がると、若馬顔負けの動きで暴れ回るので、見ているこっちは恐怖しかないです」と、担当の冨菜さん。
20歳を迎えても、元気いっぱいのクーヴェルチュールの様子は、傍から見ている分には微笑ましいですね(笑)
子馬と過ごすクーヴェルチュール
「毎年リードホースとして、当歳馬たちの子守りをお願いしていますが、毛繕いの仕方を教えたり、放牧地から厩舎に帰る時は、ゲートの前で全員を一列に並べて待機させていたりと、色んなことを教えてくれています。
本馬も慕われるのは満更でもないようです。」と、担当の冨菜さん。
写真の子馬たちは離乳初日とのこと。
普通なら親から離されてパニックになるところですが、親分が居てくれることで、みんな安心安全に離乳することができたそうです。
子馬に寄り添うクーヴェルチュール
血が繋がってなくても、みんな親分の子供たちみたいな顔をして隣で佇んでいるそうです。
"お怒りモード"のクーヴェルチュール
担当の冨菜さんいわく、
「基本的に親分の顔を見るとみんな敗北宣言するのですが、稀に喧嘩を仕掛ける無礼者がいます。
前脚でパンチを食らわせたり、後ろ蹴りで追いかけ回したりして、力関係を解らせます。」
とのこと。
"バッキバキ"の眼光で睨みつけ、歯をむき出しにされると、ほとんどの馬が戦意を喪失。
これを人間に対してもやるそうなので、お世話をする人は命懸けだそうです。
※穏やかな表情も持っています。
大変キャラが濃くて強烈な馬ですが、そこが魅力です。
見学の際は機嫌を損ねないよう注意してください。
冨菜さん、クーヴェルチュールのマル秘情報をたっぷりご提供いただき、ありがとうございました!
なお、クーヴェルチュールの見学は、6月1日~11月30日の11時~15時(北海道市場開催日は見学不可)で可能となっております。
詳しくは、ふるさと案内所にご連絡をお願いいたします。
ふるさと案内所 富菜牧場
そして、富菜牧場さんのSNSからも、クーヴェルチュールの姿をチェックできるので、ぜひフォローしてみてください♫
X(旧:Twitter)|@tominafarm
協力:富菜牧場
取材・文:片川 晴喜
デザイン・編集:椎葉 権成
監修:平林 健一
制作:Creem Pan
著作:Creem Pan・GJ
過去の『引退馬コレクション』はこちら👇
supported by
おお親分もこのコーナーに。
>イヤイヤ ・自分に仇なす馬全般
あなたほどの馬がそういうのなら……
前々からその濃ゆいキャラで存在感を発揮していましたが、ここ最近はタマとの親分子分でさらに多くの人に親分の事が知られ始めているのでタイミング的にもちょうどいいですね。
耳を完全に伏せて歯をむき出して見せるティラノサウルスのような状態の写真もあったり、濃密な親分記事堪能させていただきました。