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マテラスカイを10歳で破った鉄人!研修生から「アイアン先生」と慕われるメイショウアイアンの今! vol.51



 

かつて観衆を沸かせた名馬の"今"を紹介!

走り終えた今も、観衆を魅了したあの日の輝きは、決して色褪せない。

全国で暮らす、名馬の個性と"今"を集める『ウチの子はあの名馬!個性にLOVE❤︎ 引退馬コレクション』をお届けします!

 

今回のコレクションは、2020年の北海道スプリントC(Jpn3)などを制した、メイショウアイアン!

 

現在は、北海道沙流郡日高町にある、ひだか・ホース・フレンズで暮らしているとのこと。

そのお世話をしている村上さんにマル秘情報をたくさん聞いちゃいました!

 


村上 善己さん

ひだか・ホース・フレンズ 場長


ウマ歴:44年

出身地:北海道沙流郡平取町

趣味:カラオケ

休日の過ごし方:食べ歩き




メイショウアイアン

ニックネーム|アイアン

生年月日|2010年2月15日

生産者|藤沢牧場

馬主|松本好雄

戦績|64戦11勝(2着9回,3着3回)

獲得賞金|4,928万円(中央)、4,877万円(地方)

主な勝鞍|2020年 北海道スプリントC(G3)

父|マヤノトップガン

母|デヒアバーズ

母父|デヒア

ここにきた日|2021年11月19日

 

中央時代は条件戦で頭打ちとなるも…

メイショウアイアンは、2012年8月に札幌 芝1,800mで行われた2歳新馬でデビュー。

これが生涯唯一の芝への出走でしたが、ここでは6着に敗れました

 

半年の休養を挟み、2戦目からダートへと転向した同馬は、すぐさま適性を示して勝利を挙げるも、1勝クラスの突破には時間を要し、約1年後の4歳以上500万下で遂に勝利。

その後、降級後の同年11月に3歳以上500万下を勝ち上がると、次走の4歳以上1000万下も連勝で突破。

しかし、1600万下(3勝クラス)の壁は高く、3年間で20戦を走って馬券圏内は3着1度のみに留まる厳しい結果でした。

 

すでに8歳となっていたメイショウアイアン。

多くの馬がキャリアに終止符を打つタイミングですが、その名に「アイアン(鉄)」を持つメイショウアイアンは、ここで終わるような馬ではありませんでした。

まさに「鉄人」と呼ぶにふさわしい、驚きのキャリアを築いていくのです。


8歳を超えて本格化した"アイアンホース"

2018年、8歳シーズン途中で栗東・高橋義忠厩舎を退厩したメイショウアイアンは、ホッカイドウ競馬の田中淳司厩舎へと移籍。

転厩初戦となった6月の北海道の翼「AIRDO」特別でいきなり勝利を挙げると、11月には盛岡競馬で行われた絆C(M2・重賞)を優勝し、翌年の北海道スプリントC(Jpn3)では単勝185.3倍の低評価ながら2着に食い込む活躍をみせます。

 

さらに勢いは止まらず、翌月のグランシャリオ門別スプリント(H3、重賞)で1着となったのち、特別レースでの1勝を挟み、道営スプリント(H2、重賞)でも2着に好走。

中央と地方では、相手関係に多小の差はありますが、交流重賞で先着した相手には中央オープンクラスで活躍している馬もおり、メイショウアイアン自体が9歳を超えた今、本格化していることは、関係者の誰もが認めざるを得ない事実であったことでしょう。


まさに「名は体を表す」、10歳での快挙

前述のように地方重賞、および交流重賞で力を示し続けたメイショウアイアンは、昨年2着の雪辱を晴らすべく、次走で北海道スプリントC(Jpn3)に出走。

 

上位人気馬には、一昨年のJBCスプリント(G1)、前年のドバイゴールデンシャヒーン(G1)でも2着となったマテラスカイや、中央競馬7勝の実力派であるスズカコーズライン、これまでに重賞4勝を挙げているノボバカラなどの中央勢が名を連ね、メイショウアイアンは6番人気での出走となりました。

 

レースは、マテラスカイが好スタートから先手を取り、メイショウアイアンは先団直後の6番手を追走。

3、4コーナー中間から徐々に進出すると、4コーナー時点では2番手外まで位置を押し上げて直線へ。

逃げ込みを図るマテラスカイと、それを必死に追うメイショウアイアン、さらに内から競り掛けるスズカコーズラインが、最後は3頭横一線でゴール板を通過し、大激戦となった直線の攻防は写真判定へと持ち込まれました。

そして判定の結果、メイショウアイアンがハナ差でマテラスカイを差し切り、初の交流重賞タイトルを奪取。

ホッカイドウ競馬所属馬の同レース勝利は、2000年のオースミダイナー以来、20年ぶりの快挙であり、10歳と約4か月、デビューから53戦目での中央勢を打ち破った姿は、まさに「鉄人」そのものでした。

 

その後、同年9月にはウポポイオータムスプリント(H2、重賞)も制したメイショウアイアンですが、翌年11月に引退となり、現役生活を終えて競馬場から初めて直接入厩した功労馬として、現在暮らす「ひだか・ホース・フレンズ」へとやって来たのでした。


24回 北海道スプリントC(Jpn3) 2020.6.4 門別 曇・良 ダート1,200m 14頭(1頭取消)

着順

馬番

馬名

性齢

騎手

タイム (着差)

単勝オッズ (人気)

調教師

1

メイショウアイアン

牡10

落合玄太

1:12.8

20.0⑥

田中淳司(北海道)

2

マテラスカイ

牡6

武  豊

ハナ

2.0①

森 秀行(栗東)

2

スズカコーズライン

牡6

酒井 学

同着

4.3②

木原一良(栗東)

4

ニットウスバル

牡8

五十嵐冬樹

2

10.8⑤

佐久間雅貴(北海道)

5

ノボバカラ

牡8

桑村真明

4

6.8④

森 秀行(栗東)

 
 

ひだか・ホース・フレンズさんは、牧場への就職を考えている方への研修プログラムも行っておられますが、メイショウアイアンはアザトサ☆5に加え、ベタベタ☆5とのことで、馬と関わった経験のない研修生の方のふれあいにも向いていることが分かります!

 

担当している村上さんに、メイショウアイアンの"印象的なエピソード"を聞いてみました!

 

「現役引退後、体調を戻すのに、ものすごく苦労しました。

僚馬である当場産のハフリンガー種・チロルと共に放牧され、コミュニケーションをとりつつ、体調を万全に整えていきました。」

 

競走馬として10年近く走り続けたわけですから、力を抜いてリラックスした状態になるまでに時間もかかったのではないかと想像します。

メイショウアイアンの精神面を支えてくれた、僚馬のチロルの存在も大きかったのですね。

 
 

手入れ中のメイショウアイアン


舌をだら~んと出して、とてもリラックスしている様子がうかがえますね!

 

「研修生が最初に携わることが出来るくらい温厚な性格なので、研修生からは『アイアン先生』と呼ばれています。」

と、担当の村上さん。


メイショウアイアン(奥)と、チロル(手前)


2頭で一緒に水を飲む様子


ハフリンガー種のチロルと、同じ放牧地で暮らすメイショウアイアン。

お互い良い意味でのコミュニケーションを取り合っているようです。

また、放牧地が隣同士で、牧柵越しにメイショウボーラーを見ているとのことでした。

 

メイショウアイアンが優勝した北海道スプリント当日、同レースに私の後輩、教え子が携わった競走馬が出走することとなり、門別競馬場で現地観戦しておりました。

1年後、そのレースの優勝馬に携わることになると知ったときは、運命を感じるものがありました。

また、アイアンの性格がすごく温厚なのは、今まで携わってきた人たちが優しい対応をしてくれていたおかげと思っております。

ぜひ優しい性格のアイアンを見に来てください。


 

村上さん、メイショウアイアンのマル秘情報をたっぷりご提供いただき、ありがとうございました!

なお、メイショウアイアンの見学は、ひだか・ホース・フレンズ公式サイト(https://www.uma-tomo.com/)にて見学日程をご確認のうえ、ひだか・ホース・フレンズ公式サイト内の「申込フォーム」より、お申込みください。

 

※申込多数の場合は抽選となります

※見学の月ごとに申込受付期間を設けております。受付の日程は、ひだか・ホース・フレンズの公式サイトでご確認ください。申込締切後、見学の可否はメールにてお知らせが届きます。

 

そして、ひだか・ホース・フレンズさんのSNSからも、メイショウアイアンの姿をチェックできるので、ぜひフォローしてみてください♫

 

X(旧:Twitter)|@UmaTomo_Hidaka

Instagram|umatomo.hidaka

Facebook|UmaTomo.Hidaka


協力:日高軽種馬農業協同組合

   ひだか・ホース・フレンズ

取材・文:片川 晴喜

編集・デザイン:椎葉 権成

監修:平林 健一

制作:Creem Pan

著作:Creem Pan・GJ


 

過去の『引退馬コレクション』はこちら👇


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1件のコメント


走る速さだけに限れば競走馬のピークは4歳秋ごろだと言われますよね。

でも競技馬はちょっと違う。馬場馬術・総合馬術は8歳以上、障害飛越は9歳以上でないとFEI(国際馬術連盟)のワールドカップやオリンピックに出場することはできません。馬術界の10歳馬はまだまだ若造です。


しかし、競馬にだって例外はある。

本記事で知ったメイショウアイアン号の2020年北海道スプリント制覇のビデオを観て、今年のパリ・オリンピックで「初老ジャパン」がメダルを獲得した理由がわかるような気がしました。


人も馬も、現役生活が長いということは、それだけコミュニケーションの時間が長かったということ。

地道にしっかりと信頼関係を築く時間に恵まれたということ。

結果、人が自分に何を求めているのか、馬がより明確に理解するようになる。それに応えることが自分の仕事だとわかってくれる。勝ち負けの概念はなくても「力を尽くして仕事をやり遂げる」達成感を騎乗者と共有してくれる。


人馬が互いに信じ合うというのは、そんな状態のことではないかと思います。

そしてレースでも競技でも、この「信頼」という経験値の蓄積が、ここぞという時の勝敗を決する要因になります。10歳のアイアンの重賞制覇も初老ジャパンの銅メダルも、その証左でした。


若さに任せて勝つことはできる。でも、遅咲きではあっても人が馬を、馬が人を、心から信じて勝ち取った成果ほど美しいものはない。

それを教えてくれた「鉄の男」は、今こんなにも優しい目をしているんですね。☺️🫶

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